プロ野球

日本シリーズ第2戦はただの引き分けではなかった。激闘の中で明確な「優位」を示したのは――

氏原英明

2022.10.24

9回の土壇場で飛び出した、代打・内山の同点3ラン。この一打で引き分けに終わった試合から見えたものとは。写真:山手琢也

「これがシリーズなんですかね」

 延長12回の激闘を振り返ったオリックスの中嶋聡監督の言葉には実感がこもっていた。「勝ちきれない」「それでも粘れた」という記者の質問にボソッと呟いたのだ。

 9回まで、オリックスが3対0でヤクルトをリードした試合。最終回のマウンドには今季途中からクローザーを担っていた阿部翔太が、勝利の方程式を完成させるべく立っていた。

 しかし、ヤクルトが土壇場で反撃に成功する。無死一、二塁から代打・内山壮真が3ラン本塁打を放ち、試合を振り出しに戻したのだった。

 オリックスからしてみれば「まさか」。ヤクルト側からはまさに「起死回生」。

 内山の豪快な一発により、日本シリーズ第2戦は延長12回まで決着がつかず。引き分けに終わった。
 
 この引き分けが意味するものは何か。

 おそらく、中嶋監督が試合後の囲み取材で言葉に実感を込めたのは、そのことが頭をよぎっていたからだろう。

 この引き分けにはさまざまな形に受け取れる。

 オリックスが連敗しなかったのが良かったのか。ヤクルトに土がつかなかったことがよかったか。

 視点を変えればさまざまな見方ができるが、目まぐるしく変化していく試合展開を振り返りながら最終的に行き着いたのは、第1戦に勝利したヤクルトの優位が、さらに加速したということだ。

 その大きな要因の一つは、この2試合の中盤以降の攻防にある。

 第1戦をヤクルトの勝利で終えた後も、このシリーズに趨勢はまだ分からないと思った。オリックスがいつ1勝目を挙げるかによって、極端に流れは変わる。そんな予感めいたものがあった。その理由は、リーグ戦を通して作り上げたオリックスのリリーフ陣の強靭さが、ヤクルト打線に通用しそうな気配があったからだ。相手エースの山本由伸で初戦を落としたとはいえ、このリリーフ陣がいれば怖くない。そう思えたのだ。

 事実、第1戦でオリックスのリリーフ陣はほとんど打たれなかった。先発の山本が5回途中で降板した後は、4投手が4イニングをつないだが、8回に平野佳寿が村上宗隆に一発を浴びた以外に失点はなかった。

 オリックスのリリーフ陣の特徴は、ストレートに球速があり、ボールに勢いがある点だ。ストレートは150キロを当たり前のように超え、スプリット系の落ちるボールを武器にパワーピッチングをしてくる。

 本田仁海、山﨑颯一郎、宇田川優希、近藤大亮、ワゲスバック。多くのチームはブルペンに左打者対策のサウスポーをブルペン入りさせるものだが、オリックスは軟投派のサイド右腕・比嘉幹貴を除けばパワーピッチャーばかりだ。力で押し切れるだけのピッチングスタッフをそろえている。

 ヤクルト打線も、強いボールに手を焼いており、これがオリックスにとってはかなりのアドバンテージになるだろうと想像ができた。後は打線が繋がるようになれば、シリーズの趨勢は大きく変わる。そんな予感があった。
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