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高校通算90本塁打もプロへの“課題”は多し。ドラフトまであと1年となった怪物・佐々木麟太郎の「現在地」

西尾典文

2022.10.25

独特のバッティングフォームから長打を放つ佐々木。だが、彼の打撃には課題も少なくないようだ。写真:滝川敏之

 今年のドラフト会議も終わったばかりだが、すでに各カテゴリーで来年のドラフトへ向けたアピールは始まっている。とりわけ高校生で注目を集める存在になるのは、やはり佐々木麟太郎(花巻東)ではないだろうか。
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 21年の入学当初からホームランを量産し、今秋の岩手県大会終了時点で高校通算本塁打は90本に到達。史上最多記録である111本を放った清宮幸太郎(早稲田実→日本ハム)の2年秋終了時点の本数が「78」だったと考えても、佐々木が最多記録を樹立する可能性は極めて高いと言えるだろう。

 しかし、佐々木が2023年ドラフトの押しも押されもせぬ目玉と言えるかというと、そこまでの存在ではないというのが現状ではないだろうか。その大きな理由としては、他にも上位指名が有力と見られている選手が来秋のドラフトでは非常に多い点が挙げられる。

 同じ高校生では真鍋慧(広陵)、佐倉侠史郎(九州国際大付)、明瀬諒介(鹿児島城西)のスラッガーたちに加え、捕手では堀柊那(報徳学園)、投手では前田悠伍(大阪桐蔭)を筆頭に東松快征(享栄)、平野大地(専大松戸)、坂井陽翔(滝川二)などが高い注目を集めている。

 さらに人材が豊富なのが大学生で、投手だけでも細野晴希(東洋大)、西舘勇陽(中央大)、常広羽也斗(青山学院大)、下村海翔(青山学院大)、滝田一希(星槎道都大)、後藤凌寿(東北福祉大)、古謝樹(桐蔭横浜大)、松本凌人(名城大)、上田大河(大阪商業大)、高太一(大阪商業大)。野手にも進藤勇也(上武大・捕手)、広瀬隆太(慶応大・二塁手)、上田希由翔(明治大・三塁手)、松浦佑星(日本体育大・遊撃手)など、次々と有力候補の名前が挙がる。
 
 さらに社会人では今年の都市対抗で大活躍した度会隆輝(ENEOS・外野手)も控えている。このなかで佐々木が「図抜けた存在になる」というのは、なかなか容易ではなく、現時点で断言はできない。

 無論、佐々木自身にもクリアすべき課題はある。やはり気になるのが、スイングに関する無駄な動きの多さだ。

 バットを揺らしながら構え、先端を投手方向に向けてトップの形を作るスタイルを維持する佐々木。だが、そこから振り出すときにどうしてもヘッドが出遅れ気味になってしまうのだ。スイングスピードとインパクトの強さは1年生時から高校生離れしたものがあり、うまくバットをボールの下に入れて飛ばす力はあるものの、とくに高めの速いストレートに対しては振り遅れてファウルや空振りになるシーンは散見する。

 今年3月に行なわれた春の選抜高校野球では米田天翼(市和歌山)のストレートに完全に差し込まれていたのを覚えている人も少なくないだろう。それから約4か月後に行なわれた夏の岩手大会準決勝でも、斎藤響介(盛岡中央→オリックス3位指名)と対戦し、結果は4打数2安打だったが、ヒットはいずれも会心の当たりとは程遠いもので、内容的には抑え込まれていたように見えた。
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打つ以外に特徴はなく――