今季、最下位に沈んだ中日が貧打解消の切り札として獲得したアリスティデス・アキーノ。メジャー通算41本塁打という実績を引っ提げて来日する彼は、一体どんな選手なのだろうか。
大谷翔平(エンジェルス)と同じ1994年生まれの彼が初めて脚光を浴びたのは、レッズに在籍していた2019年8月のことだった。
1日にメジャー昇格を果たすと、いきなり最初の10試合で7本塁打。10日のカブス戦では、ルーキーでは史上初の3イニング連続ホーマー、14日にはメジャー最初の14試合で9本塁打という史上最速記録も樹立した。月間でも、ナ・リーグ新人記録の14本塁打。アキーノの名は瞬く間に球界全体に知れ渡った。
この大爆発ぶりからも分かるように、やはり最大の魅力は規格外のパワー。193cm・99kgの恵まれた体格で、ひとたびバットの芯で捉えれば打球はどこまでも飛んでいく。今季の最高打球速度は113.6マイル(約182.8キロ)はMLB全体でも上位10%に入る水準で、本塁打が出にくいバンテリンドームも楽々と制圧できるに違いない。
アキーノにはもう1つ大きな武器がある。メジャーでもトップクラスの強肩だ。今季は外野出場わずか78試合で12個の捕殺(ライトで10、レフト2)を記録し、これは堂々リーグ最多だった。
スタットキャストによると、今季の送球速度トップ10の平均値が96.9マイル(約155.9キロ)で、右翼手ではMLB2位。日本時代、球界屈指の強肩として知られた鈴木誠也(カブス)が89.7マイル(144.4キロ)だから、いかにすごいか分かるだろう。中日の助っ人では、かつてアレックス(2003~06年在籍)という選手が強肩で鳴らしたが、アキーノも守備でバンテリンドームのファンを沸かせるはずだ。
それにしても、ここまで規格外のパワーと強肩を誇る選手を、なぜ年俸120万ドル(約1億6560万円)という比較的安い価格で獲得できたのか。理由は、アキーノに明白かつ決定的な弱点があるからだ。
それは、打撃がとにかく粗っぽいこと。常に一発狙いで振り回すだけでなく、ボール球でも見境なく手を出すため、打率が上がらず三振の山となる。ここ3年はいずれも打率1割台に低迷し、全打席の3分の1以上で三振を喫している。
スライダー、カーブなどのブレイキング・ボール、いわゆる「曲がる系」の変化球に弱いのも特徴。ここ3年の打率と空振り/スウィング率は以下の通りだ。
2022 打率.151 空振り率43.4%
2021 打率.096 空振り率50.9%
2020 打率.118 空振り率36.9%
データを見るだけで、外のスライダーにクルクルとバットが回る姿を想像できてしまう。素晴らしい才能を秘めながらも、メジャーで完全開花できなかったのも、この粗い打撃のためと言っていい。おそらく日本でも、徹底して外角の変化球攻めに遭うはず。そこをいかに我慢できるかが成功を左右するだろう。
ここ数年、ずっと得点力不足に泣かされているドラゴンズ。果たして28歳のドミニカンは“強竜打線”復活の切り札となるだろうか。
構成●SLUGGER編集部
大谷翔平(エンジェルス)と同じ1994年生まれの彼が初めて脚光を浴びたのは、レッズに在籍していた2019年8月のことだった。
1日にメジャー昇格を果たすと、いきなり最初の10試合で7本塁打。10日のカブス戦では、ルーキーでは史上初の3イニング連続ホーマー、14日にはメジャー最初の14試合で9本塁打という史上最速記録も樹立した。月間でも、ナ・リーグ新人記録の14本塁打。アキーノの名は瞬く間に球界全体に知れ渡った。
この大爆発ぶりからも分かるように、やはり最大の魅力は規格外のパワー。193cm・99kgの恵まれた体格で、ひとたびバットの芯で捉えれば打球はどこまでも飛んでいく。今季の最高打球速度は113.6マイル(約182.8キロ)はMLB全体でも上位10%に入る水準で、本塁打が出にくいバンテリンドームも楽々と制圧できるに違いない。
アキーノにはもう1つ大きな武器がある。メジャーでもトップクラスの強肩だ。今季は外野出場わずか78試合で12個の捕殺(ライトで10、レフト2)を記録し、これは堂々リーグ最多だった。
スタットキャストによると、今季の送球速度トップ10の平均値が96.9マイル(約155.9キロ)で、右翼手ではMLB2位。日本時代、球界屈指の強肩として知られた鈴木誠也(カブス)が89.7マイル(144.4キロ)だから、いかにすごいか分かるだろう。中日の助っ人では、かつてアレックス(2003~06年在籍)という選手が強肩で鳴らしたが、アキーノも守備でバンテリンドームのファンを沸かせるはずだ。
それにしても、ここまで規格外のパワーと強肩を誇る選手を、なぜ年俸120万ドル(約1億6560万円)という比較的安い価格で獲得できたのか。理由は、アキーノに明白かつ決定的な弱点があるからだ。
それは、打撃がとにかく粗っぽいこと。常に一発狙いで振り回すだけでなく、ボール球でも見境なく手を出すため、打率が上がらず三振の山となる。ここ3年はいずれも打率1割台に低迷し、全打席の3分の1以上で三振を喫している。
スライダー、カーブなどのブレイキング・ボール、いわゆる「曲がる系」の変化球に弱いのも特徴。ここ3年の打率と空振り/スウィング率は以下の通りだ。
2022 打率.151 空振り率43.4%
2021 打率.096 空振り率50.9%
2020 打率.118 空振り率36.9%
データを見るだけで、外のスライダーにクルクルとバットが回る姿を想像できてしまう。素晴らしい才能を秘めながらも、メジャーで完全開花できなかったのも、この粗い打撃のためと言っていい。おそらく日本でも、徹底して外角の変化球攻めに遭うはず。そこをいかに我慢できるかが成功を左右するだろう。
ここ数年、ずっと得点力不足に泣かされているドラゴンズ。果たして28歳のドミニカンは“強竜打線”復活の切り札となるだろうか。
構成●SLUGGER編集部