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プロ野球

ソフトバンクFA移籍の嶺井博希が培った勝負師の技術。プロ9年目で“勝てる捕手”の才能が開花

萩原孝弘

2022.11.27

今季飛躍の時を迎えた嶺井は大型契約でソフトバンクへ。DeNAでの成長が評価につながった。写真:萩原孝弘

今季飛躍の時を迎えた嶺井は大型契約でソフトバンクへ。DeNAでの成長が評価につながった。写真:萩原孝弘

 今シーズンまでDeNAに在籍していた嶺井博希がFA権を行使し、11月21日にソフトバンクへの移籍が決定した。新契約は4年総額3億円とも言われ、出身地の沖縄県に近い九州のチームで再び羽ばたこうとしている。

 振り返れば、“ハマのシーサー”の愛称でファンに、チームに愛された男の入団は、ベイスターズが低迷期から脱するタイミングとちょうど重なり合っていた。

 沖縄尚学高では東浜巨とバッテリーを組み、沖縄勢2度目となる全国制覇を達成。亜細亜大でも東浜、九里亜蓮、山﨑康晃らの“亜大ツーシーム”を受け続け、4年時には神宮大会も制覇するなど、アマチュア時代は数々の栄冠を手にしてきた。

 そんな華麗な球歴を持つ“勝てるキャッチャー”は2013年ドラフト3位指名でDeNAに加入した。チームは前年に6年連続の最下位を脱出したものの、8年連続でBクラスと低迷期真っ只中。嶺井は目には見えない勝運を運んでくれるのではとの期待を抱かせてくれた。

 実際、ルーキーイヤーの交流戦・西武戦ではプロ初ヒットが逆転サヨナラ打となる離れ業を披露。翌年には亜大の後輩・山﨑も入団し、暗黒期脱出の光が差してくる、ラミレス政権となった16年にはDeNAでは初のクライマックスシリーズ進出を果たした。1勝1敗で迎えたファーストステージ3戦目、引き分けでもファイナルステージ進出が断たれる11回表に決勝タイムリーを放つなど、“勝てるキャッチャー”の片鱗を随所に披露してきた。
 
 しかし近年は苦しんでいた。18年は91試合に出場するも、年々試合数を減らし続け、昨年はわずか36試合出場にとどまった。打率も.189に終わり、シーズン後半にはファーム生活も経験。昨年の契約更改では「契約していただけるだけでありがたい」と控えめなコメントながら、オフには恒例となった松田宣浩(当時ソフトバンク)らとともに自主トレで汗を流すなど、鍛錬を続けた。

 そして、今年の嶺井は一皮剥けた。今シーズンから加入した相川亮二コーチとの出会いや、昨オフの右ヒジ手術も功を奏し、自己最多の94試合に出場。まず打撃では、3年ぶりに一発を放つなど計5本塁打は自己最多タイ、30打点はキャリアハイを更新した。何より“本業”としての守備が印象的だった。

 5月4日には大貫真一を巧みなリードで引っ張り、自らも横浜スタジアムで初のお立ち台に立つと、17日には怪我から復帰した今永昇太に対し、ストレート中心の配球で中日打線を押し込んで完封勝利をアシスト。22日ヤクルト戦は敗れこそしたが、苦しい投球となっていた有吉優樹にカーブを多投させ、相手打線の目先を変える苦心のリードは経験に基づく熟練の技を感じさせた。

 6月7日の日本ハム戦では今永のノーヒットノーランをアシストする大仕事をやってのけ、8月の快進撃時にはお立ち台に3回も上がる大活躍を見せた。三浦大輔監督からも再三にわたり、臨機応変のリードが高評価を与えられていた。9年目にして主戦捕手の座を手にし、里崎智也氏の捕手の貢献度を数値化する「捕手QS率」でも両リーグ3位の70.3%の好成績を残した。

 アマチュア時代の勝運をプロでも開花させはじめた嶺井博希は、常勝球団の下でさらなる飛躍の時を迎える。
  
取材・文・写真●萩原孝弘

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