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“天才肌”の印象を抱かせた明大時代とは異なる姿。苦難の高山俊が阪神でもう一度輝くためのカギは?

西尾典文

2022.11.30

ここ数年は二軍生活が続いている高山。エリート街道を歩んできた彼の課題とは。写真:産経新聞社

 15年ぶりに岡田彰布監督が指揮を執る阪神。2022年シーズンは開幕9連敗と最悪のスタートを切りながらも、最終的にはAクラスの3位まで浮上しただけに、17年前のリーグ制覇を知る指揮官の再任で18年ぶりの優勝にかかる期待も大きい。
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 そんなチームで復活が期待される存在と言えば、高山俊ではないだろうか。

 プロ入りまでの彼はいわゆる"エリート街道"を歩んできた。日大三高では、強力打線の中軸を担って3年夏に甲子園優勝。進学した明治大学では入学直後からヒットを量産。そして東京六大学史上最多となる通算131安打をマーク。名実ともにアマチュア球界屈指の巧打者として名を刻んだ。

 2015年のドラフト会議では、くじ引きの目玉となり、阪神とヤクルトから1位指名を受け、金本知憲監督(当時)が当たりくじを引き当てて阪神に入団。余談だが、外れくじを当たりだと勘違いしたヤクルト真中満監督(当時)のド派手なガッツボーズは今でもドラフト史を振り返る際に"迷シーン"として紹介される。

 伝統の縦ジマのユニホームを身にまとった高山は、プロ入り後も1年目は周囲の小さくない期待に応えた。134試合に出場して136安打、8本塁打、65打点、打率.275と見事な成績を残し、新人王にも輝いた。

 しかし、高山のプロ野球人生が順調だったのは、現時点でルーキーイヤーだけだったと言わざるを得ない。2年目は82安打、3年目は22安打と徐々に成績は低迷。4年目の2019年には105試合に出場して73安打と復活の兆しを見せたものの、以降の3年は二軍暮らしが続いている。

 何よりも心配なのが、二軍でも結果を残せていない点だ。過去3年間の二軍での主な打撃成績を改めて並べてみると以下のようになっている。
 
2020年:出場42試合、38安打、2本塁打、11打点、1盗塁、打率.248
2021年:出場95試合、65安打3本塁打23打点8盗塁、打率.202
2022年:出場41試合、27安打、0本塁打、12打点、2盗塁、打率.248

 春季キャンプ、そしてオープン戦では好調を窺わせる。しかし、いざシーズンが始まると結果が出ない。そんな3年間だったのがよく分かるだろう。

 これを見ると、高山がプロ入り後に大きな壁にぶつかったという印象を受けるかもしれないが、実はプロ入り前からも不安要素があった。筆者は大学最終学年となる直前の3年生の冬に当時寄稿していた雑誌の取材で話を聞いたのだが、すでにリーグ戦通算100安打を記録していながらも、長時間に渡ったインタビューで自信のある発言があまり聞かれなかったのをよく覚えている。

 当時の彼は目に見える結果を残しながらも、2年秋までは木製バットに対応できている感覚はなかったという。この時に筆者は外から見て感じていた"天才肌"とは全く異なる印象を持った。外野の守備についても中学時代までは内野とピッチャーだったために、「自信はない」と話していた。プロでも外野守備で苦労している姿を見る度に、この時の話をよく思い出す。
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高山復活を後押しする苦難の時代から再起を遂げたコーチの存在