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“天才肌”の印象を抱かせた明大時代とは異なる姿。苦難の高山俊が阪神でもう一度輝くためのカギは?

西尾典文

2022.11.30

この秋のキャンプでは選手たちを事細かくチェックしていた岡田監督。この名将の存在は高山にどのような影響を及ぼすだろうか。写真:産経新聞社

この秋のキャンプでは選手たちを事細かくチェックしていた岡田監督。この名将の存在は高山にどのような影響を及ぼすだろうか。写真:産経新聞社

 ここ数年の高山の打撃を見ていて感じるのは、打撃フォームがよく変わるという点だ。

 一時はチームの先輩だった福留孝介のような構えにしていたが、いまは右足の上げ方も大きくなったり、小さくなったりを繰り返しているように見える。打撃フォームの変化自体は他の選手にもよくあるが、結果がついてこないなかで試行錯誤を繰り返すのは、やはり自分の中でしっくりこない部分があるのではないだろうか。

 無論、「打てていた頃のフォームに戻せば良いのでは」というのは簡単だ。しかし、身体の状態は当時とは異なっており、言うほど単純な話ではない。3年間もの長期間で結果が出ないのは、やはり根本的な何かが大きく狂っていると言えるだろう。

 ただ、これだけの状況でもトレードに出されずに、チームに残り続けているというのは、逆に球団からの期待の表れとも言える。そんな高山にとって大きな追い風となるのが岡田監督の就任である。

 岡田監督は解説者時代にも、常に高山について「このまま終わる選手ではない」と話しており、この秋季練習でも直接指導を行なうなど高い期待を寄せているのが窺える。そして、もう1人大きなプラスになりそうなのが新しく打撃コーチに就任した今岡真訪コーチの存在だ。
 
 今岡コーチも野村克也監督時代の3年間は高山ほどではないものの成績を落とし、表立って非難されることも多かった。だが、2002年に星野仙一監督が就任するとトップバッターとして鮮やかに復活。さらに岡田監督のもとでも2005年には147打点をマークして打点王に輝くなどチームの優勝に大きく貢献した。

 今岡コーチも高山も打撃に関しては天才的なものがあると言われ続けてきた点は共通している。そういう意味でも苦難の時代を経て復活した同コーチの経験が、高山の復活の後押しとなり得る。

 また、チームの外野陣は近本光司が不動のレギュラーとなっているものの、佐藤輝明はサードへのコンバートの可能性があり、それ以外に実績がある選手は島田海吏くらいしか見当たらない。無論、今秋のドラフトで1位指名された森下翔太への期待も大きいが、大学時代のバッティングを見る限り、このルーキーが1年目からレギュラー争いに食い込むというのは考えづらい。そうした台所事情も考えれば、高山の入る余地はまだまだあるのではないだろうか。

 岡田監督のもとで鮮やかな復活を果たした高山がチームを優勝に導く――。そんな姿を期待している阪神ファンも多いはずだ。来年に大学時代、そしてルーキー時代に見せた輝きを取り戻してくれると願いながら一挙手一投足を見つめたい。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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