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「僕は日本への敬意を払いたい」――ヌートバー選出への“偏見”はやめよう。侍ジャパン史上初の男に期待するもの

THE DIGEST編集部

2023.01.20

日本語は「勉強中」だと言うヌートバー。彼が侍ジャパンでいかなる化学反応を呼び起こすかは実に興味深い。(C)Getty Images

日本語は「勉強中」だと言うヌートバー。彼が侍ジャパンでいかなる化学反応を呼び起こすかは実に興味深い。(C)Getty Images

 今春に6年ぶりに開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、3大会ぶりの世界制覇を目論む日本代表は、新たな試みに取り組んでもいる。それは史上初となる日系人プレーヤーの招集だ。

 ラーズ・ヌートバー。メジャーリーグの名門セントルイス・カーディナルスに所属する25歳の名はすでに日本でも話題となっている。日本人の母親を持つ彼は、WBCが設けている「本人の親のどちらかが当該国で出生している」という出場条件を満たしており、代表入りが内定となった。

 本人もやる気は十分だ。1月15日(現地)に行なわれたカーディナルスのファンイベントで取材に応じたヌートバーは、「本当に、本当に興奮している。当たり前のことだとは思っていない」と語っている。

 もっとも、彼の選出に対して日本国内では、少なからず異論がある。一部ながらSNS上では「日本の野球で育ってない選手を日本の代表として応援出来ない」「彼のことを知らないし、NPBから出る選手の枠が減るのはどうか」といった声が噴出。また、とあるテレビのコメンテーターは「申し訳ないけれど、この成績でどうして侍ジャパンに選ばれたのかが、私にはよくわからない」と疑問を投げかけてもいた。

 たしかに成績は決して「図抜けている」と評せるものではない。21年にメジャーデビューを飾ったばかりのヌートバーの主な昨季の打撃スタッツは、打率.228、14本塁打、40打点と乏しい。

 しかし、出塁率.340とMLB全体6位の四球率14.7%という数字は「足を使い、みんなで動きながら得点できる形を目指す」という栗山英樹監督のチームスタイルと合致する。ましてや決勝ラウンドに進めば、メジャーのトップクラスが相手となるだけに、確かな「ボールを見る力」を有するヌートバーの存在は、チャンスを創出する意味でも心強い。そこは「日本の野球で育っていない選手」という偏見めいた意見と日本の物差しで推し量るべきではない。
 
 また、ヌートバーの選出について栗山監督は「日本に来れば、野球の幅が広がる」と語っている。野球のグローバル化を進めていく意味でも、やはり彼の招集は重要だと言える。

 さらに言えば、彼自身が日本へのリスペクトを抱いているのも代表戦士にふさわしいと言えるのではないだろうか。先述のファンイベントでは「打席では粘って、守備では良いものを見せるつもりだ。とにかく一生懸命に頑張る」と語り、こう続けている。

「僕は日本へ行って、彼らの文化に敬意を払うようにしたい。悪い印象を残さないようにね」

 もちろん、結果が求められる世界であり、それは「失敗したくない」と語る当人も十分に理解している。それでも「やっぱりダメだった」「日本でプレーしていないから呼ぶべきじゃなかった」と断ずるのは、大会後でも遅くはないはずだ。

構成●THE DIGEST編集部

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