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「生涯忘れない経験になる」ヌートバーは熱狂する日本野球をどう見ているのか? 侍ジャパンに選ばれた25歳の想い【WBC】

THE DIGEST編集部

2023.03.09

会見で笑顔を見せながら、日本代表としてプレーする意味を語ったヌートバー。その表情は野球少年のようであった。(C)Getty Images

 ひとりの日系アメリカ人に熱視線が注がれている。ラーズ・ヌートバー(セントルイス・カーディナルス)。3月9日に初戦を迎えるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表に選出された25歳だ。
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 キッカケは、栗山英樹監督の意向だった。「他の国で育って野球をやっているなかでも、人と人はつながっていて仲間」と野球のグローバル化を図った指揮官は、大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)の通訳を務める水原一平氏を介して「どの程度興味があるか聞きたい」と確認。これにヌートバーは「書類が必要ならなんでも送る」と応じ、晴れて侍ジャパンの一員になった。

 日系人選手として初めて侍ジャパンメンバーとなったヌートバー。日本人の母親を持つ彼だが、生まれも育ちもアメリカであり、日本語はお世辞にも堪能とは言えない。それでも日本語をマスターしようと励む姿や、異文化に馴染もうとする姿勢は人々の胸を打った。

 そんな彼に対する歓迎は凄まじかった。羽田空港に到着した際には大勢のファンに出迎えられ、チーム合流初日のグラウンドでは割れんばかりの声援と拍手を送られた。それは日頃メジャーリーガーとして活躍するヌートバーでも「スーパーエキサイティング」な光景だった。
 
 すっかり"たっちゃん"(ヌートバーのミドルネームである「タツジ」に由来)の愛称も馴染んだ。そんな愛されキャラのヌートバーに聞きたいことがあった。ともすれば、過剰にも映る熱狂的な日本野球がどう見えているのか。

 開幕を前日にした8日の会見で、彼ははにかみながら、こう答えてくれた。

「本当に気に入っている。とてもアメージングなことさ。スタジアムの外でのことも含めて凄く良い経験になっている。ファンの応援を聞いていても、僕の母が野球に対してあんなに愛情を持っている理由が理解できたよ。間違いなく生涯忘れることのない経験になる」

「明日、僕がプレーすれば、僕の母や家族みんなの夢がかなう瞬間になる。こんなに大きな喜びはないね。僕を受け入れてくれたみんなには感謝以外はなにもない。本当にたのしみだ」

 まるで野球少年のように澄んだ瞳で、日本への想いを語ったヌートバー。チームの目標となる世界一に向けては「ここまでの道のりは非常に長いものだったが、準備はできた。とにかく明日の開幕戦が楽しみ」と話す表情には、充実感が滲み出た。

取材・文●羽澄凜太郎(THE DIGEST編集部)

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