まさに執念が劇的な勝利を呼び込んだ。

　現地時間３月20日（日本時間21日）に米フロリダ州マイアミにあるローンデポ・パークで行なわれたワールド・ベースボール・クラシック（WBC）準決勝で、日本代表はメキシコ代表を５対４のサヨナラ勝ちで撃破。2009年の第２回大会以来となる決勝に駒を進めた。

　まさしく土壇場での一打だった。

　８回表に２点を勝ち越された侍ジャパンは、３対４とビハインドを背負った状況で、メキシコの絶対的守護神ジオバニー・ガジェゴス（セントルイス・カーディナルス）と対峙する。

　ここで「甘いコースだけを打ちたいと思った」と語った先頭の大谷翔平（ロサンゼルス・エンジェルス）が、初球の２シームを右中間へのツーベースを放って得点機を演出。ここで同僚を鼓舞するように塁上で吠えた偉才に触発されたナインは、一気呵成の猛攻で畳みかけた。

　吉田正尚（ボストン・レッドソックス）が四球を選んで無死一、二塁とすると、村上宗隆（ヤクルト）が打席に。今日ここまで４打数ノーヒットで３三振と良いところがなかった若き主砲だったが、「何度も悔しい思いをして、そのなかで何度も仲間が助けてくれた」と奮起。ガジェゴスが151キロの４シームを弾き返すと、打球はセンターオーバー。これで吉田の代走として一塁に送られていた周東佑京（ソフトバンク）も一気に生還し、値千金のサヨナラ打となった。
  　まさに起死回生の一打を放った村上には、“野球の本場”アメリカの記者たちも驚きを隠さない。米スポーツ専門局『FOX Sports』のコメンタリーを務めるスティーブン・ネルソン氏は「ムラカミに私は感激している」と吐露。ここまで不振に喘いできたことに触れつつ、「彼は苦労の末にここまでたどり着いた。本当に…最高すぎる」と絶賛した。

　また、米スポーツ専門局『Bally Sports West』で活動してきたコメンタリーのパトリック・オニール氏は「私が野球を愛する理由のひとつは、この日本とメキシコの準決勝のようなドラマがあるからだ」と強調。そして、一部で開催に対する否定的な意見が相次いだWBCへの持論を披露した。

「いったいなんと表現したらいいんだろう。日本の凄まじい野球だ。スリラーだ。オオタニが舞台を整え、そしてムラカミがそれをモノにする。これ以上ないほどに信じられないような試合だった。メキシコも素晴らしかった」

　世界を驚かせるドラマチックな勝利を挙げた日本。その興奮はしばらく続きそうだ。

構成●THE DIGEST編集部

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