悪夢のような“惨敗”からいかにして立ち直るべきか――。韓国球界では、ここ数か月にわたって、このテーマがしきりに論じられている。
キッカケとなったのは、去る3月21日に幕を閉じたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でのパフォーマンスにある。韓国代表はキム・ハソン(サンディエゴ・パドレス)やトミー・エドマン(セントルイス・カーディナルス)らメジャーの実力派に加え、イ・ジョンフら国内のスターを揃えて挑んだが、3大会連続での1次ラウンド敗退の憂き目に遭ったのである。
それこそ課題は山のように存在する。チームを率いたイ・ガンチョル監督が大会後に「私に非がある」と漏らした投手陣の崩壊に加え、パワー不足の感が否めなかった打線、さらにはアメリカでキャンプを実施した大会前の調整の是非など、すでに大量に噴出している状況だ。ゆえに国内では「野球の根幹が崩れる」(韓国メディア『EDaily』より)などと批判の声が渦巻き、チームはもちろん、球界全体が逆風に晒されている。
この手厳しい国内の論調とは異なる持論を投げかけたのが、元韓国代表投手のク・デソンだ。
現在53歳のク・デソンは2001年に開催されたシドニーオリンピックでの銅メダル獲得に貢献し、韓国球史に名を刻むレジェンドだ。ニューヨーク・メッツにも所属してメジャーでも活躍し、2001年から約3年にかけて日本のオリックスでもプレーした右腕である。
そんな伝説の名投手は、韓国の日刊紙『Ilgan Sports』の取材に対して「もちろん代表は応援していたし、もっと頑張って、なんとか決勝ラウンドまでは進んでほしかった」と吐露。そのうえで、「だけど、私たちの時代の代表チームを比較に出すのは無理があるよ。時代が変わったんだ」と強調した。
53歳にして今もオーストラリアで現役生活(コーチ兼任)を送るク・デソンは、WBC期間中に同代表が春季キャンプ先だった東京都・府中市で市民と交流を図る姿をあげ、「自分たちとは時代が違う」と訴える理由を説明する。
「韓国代表なら、あんな姿は見せなかっただろう。大会が近づけば近づくほど、練習また練習の日々だ。外出もほとんどしない。それではダメなんだ。オーストラリアは運動する時は運動、勉強する時は勉強に集中する。コーチの私にいたずらをしても、練習時間は集中して練習に没頭する。試合で相手に実力が及ばなくても『もう一度やってみよう』と選手たちは闘志を燃やすんだ。とにかくスポーツを楽しむという気持ちが強いんだよ」
シドニーオリンピックでは日本戦で2度も好投し、「元祖・日本キラー」の異名を持つ彼は、さらに次のようにも論じ、母国球界が抱える問題点を指摘している。
「韓国は『必ず勝つべき』という野球をする。とくに歴史的にも因縁が深い日本が相手となると『とにかく勝たなければならない』という雰囲気になる。今回のWBC代表チームもそうだった。絶対に勝たなければならないというプレッシャーのなかで、選手たちは心身ともにすり減っていたと思う。せっかく最善を尽くしたのに『間違っていた』『申し訳ありません』と選手やコーチたちの謝罪が続くのは、とても残念だ」
国内でネガティブな声を受ける現状については「誰かに問題を押し付けるのが、何の役に立つというんだろうね。間違った点は認めて、良い部分には称賛と励ましを送った方がいい。野球人が皆一緒に解決しなければならない」と訴えたク・デソン。このレジェンド投手の投げかけは、韓国が国際舞台で強さを取り戻すためのキッカケとなるだろうか。
構成●THE DIGEST編集部
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キッカケとなったのは、去る3月21日に幕を閉じたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でのパフォーマンスにある。韓国代表はキム・ハソン(サンディエゴ・パドレス)やトミー・エドマン(セントルイス・カーディナルス)らメジャーの実力派に加え、イ・ジョンフら国内のスターを揃えて挑んだが、3大会連続での1次ラウンド敗退の憂き目に遭ったのである。
それこそ課題は山のように存在する。チームを率いたイ・ガンチョル監督が大会後に「私に非がある」と漏らした投手陣の崩壊に加え、パワー不足の感が否めなかった打線、さらにはアメリカでキャンプを実施した大会前の調整の是非など、すでに大量に噴出している状況だ。ゆえに国内では「野球の根幹が崩れる」(韓国メディア『EDaily』より)などと批判の声が渦巻き、チームはもちろん、球界全体が逆風に晒されている。
この手厳しい国内の論調とは異なる持論を投げかけたのが、元韓国代表投手のク・デソンだ。
現在53歳のク・デソンは2001年に開催されたシドニーオリンピックでの銅メダル獲得に貢献し、韓国球史に名を刻むレジェンドだ。ニューヨーク・メッツにも所属してメジャーでも活躍し、2001年から約3年にかけて日本のオリックスでもプレーした右腕である。
そんな伝説の名投手は、韓国の日刊紙『Ilgan Sports』の取材に対して「もちろん代表は応援していたし、もっと頑張って、なんとか決勝ラウンドまでは進んでほしかった」と吐露。そのうえで、「だけど、私たちの時代の代表チームを比較に出すのは無理があるよ。時代が変わったんだ」と強調した。
53歳にして今もオーストラリアで現役生活(コーチ兼任)を送るク・デソンは、WBC期間中に同代表が春季キャンプ先だった東京都・府中市で市民と交流を図る姿をあげ、「自分たちとは時代が違う」と訴える理由を説明する。
「韓国代表なら、あんな姿は見せなかっただろう。大会が近づけば近づくほど、練習また練習の日々だ。外出もほとんどしない。それではダメなんだ。オーストラリアは運動する時は運動、勉強する時は勉強に集中する。コーチの私にいたずらをしても、練習時間は集中して練習に没頭する。試合で相手に実力が及ばなくても『もう一度やってみよう』と選手たちは闘志を燃やすんだ。とにかくスポーツを楽しむという気持ちが強いんだよ」
シドニーオリンピックでは日本戦で2度も好投し、「元祖・日本キラー」の異名を持つ彼は、さらに次のようにも論じ、母国球界が抱える問題点を指摘している。
「韓国は『必ず勝つべき』という野球をする。とくに歴史的にも因縁が深い日本が相手となると『とにかく勝たなければならない』という雰囲気になる。今回のWBC代表チームもそうだった。絶対に勝たなければならないというプレッシャーのなかで、選手たちは心身ともにすり減っていたと思う。せっかく最善を尽くしたのに『間違っていた』『申し訳ありません』と選手やコーチたちの謝罪が続くのは、とても残念だ」
国内でネガティブな声を受ける現状については「誰かに問題を押し付けるのが、何の役に立つというんだろうね。間違った点は認めて、良い部分には称賛と励ましを送った方がいい。野球人が皆一緒に解決しなければならない」と訴えたク・デソン。このレジェンド投手の投げかけは、韓国が国際舞台で強さを取り戻すためのキッカケとなるだろうか。
構成●THE DIGEST編集部
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