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大谷の新たな代名詞として定着する日が来る?「MLB変化球トレンド史」から読み解くスイーパーの位置付け<SLUGGER>

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2023.04.19

WBC決勝でマイク・トラウトを打ち取った決め球もスイーパーだった。(C)Getty Images

WBC決勝でマイク・トラウトを打ち取った決め球もスイーパーだった。(C)Getty Images

 大谷翔平(エンジェルス)の新たなウイニング・ショットとして、日本でも一躍知名度が上昇している「スイーパー」。スイーパーとは、ざっくり言ってしまうと「縦変化が少なく、真横に滑るように大きく変化するスライダー」のことだ。

 MLBが運営するデータ解析システム「スタットキャスト」では、これまでスライダーとして分類されていたが、今季から独立した球種扱いとなり、それによってファンの間でも一気にその名が浸透するようになった。

 大谷のスイーパーは水平方向に最大19インチ(約48cm)も変化し、ここまで被打率.057と抜群の威力を発揮。全奪三振の半分をスイーパーで仕留めるなど、瞬く間に球界屈指の使い手として浮上した。

 ただし、スイーパーは何も大谷の専売特許というわけではない。他にも数多くの有力投手がこのスイーパーを武器に活躍しているし、ヤンキースでは数年前からマイナーで多くの投手たちにスイーパーの活用を奨励している。今やスイーパーは、「新時代の変化球」として位置付けられていると言っても過言ではない。
 これまでも、MLBではそれぞれの時代で一世を風靡した球種があった。

 1980年代にはスプリット・フィンガード・ファストボール(SFF)、今でいうスプリッターが大流行した。フォークボールより速く、落差が浅いことが特徴で、ブルース・スーター、マイク・スコット、ジャック・モリスといった投手たちがこのスプリッターを武器に大活躍した。

 90年代中盤に入ると、スプリッターは「肩やヒジへの負担が大きい」との考えから使い手が減少した一方、カット・ファストボール(カッター)や2シーム・ファストボールなど、打者の手元で鋭く変化するムービング・ファストボールが流行した。マリアーノ・リベラ(ヤンキース)は実質カッターのみで歴代最多652セーブを挙げ、史上初めて得票率100%で殿堂入りを果たすほどの大投手となった。

 もっとも、カッターは90年代に入って新たに「発明」されたわけではない。日本でも「真っスラ」という呼び名があったように、速球とスライダーの中間のような球を投げる投手は昔から存在した。リベラらの活躍によって、後追いで新たに名前を与えられた、と表現する方が正しい。この点では、スイーパーについてもまったく同じことが言える。

 ある特定の投球傾向の投手たちをチーム戦略と合致させて成功した例もある。2010年代前半のパイレーツは、2シーム/シンカーでゴロを多く打たせる投手とセットで好守の内野手を獲得し、相乗効果を生み出すことに成功。20年間にわたる長期低迷から脱却し、3年連続でポストシーズン進出を果たした。
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