プロ野球

長いトンネルを抜けた西武・西川愛也。敗戦の中で見せた価値あるヒットを松井稼頭央監督も賞賛「1本出たことが大きい」

岩国誠

2023.05.03

不名誉な記録に終止符を打った西川。この勢いでヒットを量産していきたい。写真:岩国誠

 4月30日の楽天戦、西武の西川愛也は7回の第4打席でセンター前ヒットを放ち、連続打席無安打の野手ワースト記録を62で止める。その次戦となった5月2日の日本ハム戦の先発メンバーには「2番レフト西川」の名がしっかり書かれていた。

「もちろん、むちゃくちゃ大事っすね」

 足掛け3年をかけ、その長いトンネルをようやく抜けた西川。だが、次の試合となる今日をどのような結果で終えるか。そこが大事になってくると十分理解していた。

 1回裏、1番に定着した愛斗が日本ハム先発・伊藤大海からセンター前ヒットで出塁。この日の初打席はランナーのいる場面で回ってきた。

 初球は盗塁をサポートする空振り。2球目は外角いっぱいのストレートを見送ったがストライクの判定。2球で追い込まれてしまった。

「愛斗さんが先頭で出たので、追い込まれていましたが、最悪進塁させたいと思っていたんですけど」

 最後はインハイの吊り球に手を出して空振り三振。3球すべてストレートだった。

「(最後のボールは)手が出ちゃったという感じで、悔しかったです。何もできなかったです」

 2打席目もストレート中心で攻められ、最後はスプリットで空振り三振。その間に好投していたエンス自らのミスが重なり、チームは失点を重ねていった。

 3点を追いかける6回裏。1アウトから再び愛斗がヒットで出塁。西川に3回目の打席が回ってきた。前の2打席はボールの見極めを意識したのか2球で追い込まれていたが、この打席の西川は積極的だった。

 1ボールからの2球目、インコースのストレートをしっかり振り抜き、打球は1、2塁間を抜いた。2試合連続ヒットでチャンスを広げ、2番の役割をきっちりと果たした。

「前の2打席とも、真っ直ぐに入っていけていなかった。まずは、その真っ直ぐにしっかりタイミングを合わせること、そこだけを考えて打席に入りました。(自分にとっても)すごく大きかったです」

 試合後、松井稼頭央監督は、ミスが重なった試合を淡々と振り返ったあと、西川についての記者の質問に、少し表情を和らげてこう答えた。
 
「(1打席目の3球三振は)それだけ相手の伊藤くんも非常にいいピッチャーですからね。得点圏でのピッチングもまた変わってくるでしょうし、そう簡単にはね。でも、その反省を活かして(3打席目で)打ったわけですから、非常にナイスバッティングだったんじゃないかと思います。なんとか1、2塁間を抜いてくれないかなと思っていたところをね、愛也がしっかりとね、ここで1本出たっていうのは大きいと思うし、前の試合で打って、今日も1本っていうことも本当に大きい」

 この日、試合は1対7と結果的に敗れてしまったが、ペナントレースは1試合ですべてが終わるわけではない。10月まで続く長い戦いのなかで、次の試合に何をつないでいけるのか。それがシーズンを戦ううえで、個人としてもチームとしても大事になってくる。

 試合終了後、西川はこの日1軍復帰した山川穂高とともに、バットを持って室内練習場へと向かったが、その表情はいきいきとしていた。残念ながら施設のなかへ入ることはできなかったが、しばらくすると壁越しに小気味よい打球音が聞こえてきた。その1球1球が、きっとより良い明日へとつながっていく。

取材・文●岩国誠

【著者プロフィール】
岩国誠(いわくにまこと):1973年3月26日生まれ。32歳でプロ野球を取り扱うスポーツ情報番組のADとしてテレビ業界入り。Webコンテンツ制作会社を経て、フリーランスに転身。それを機に、フリーライターとしての活動を始め、現在も映像ディレクターとwebライターの二刀流でNPBや独立リーグの取材を行っている。

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