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MLB

「逆ボイコット」で今季最多のファンが集結!アスレティックスファンが移転を目論む横暴オーナーに一矢報いた日<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2023.06.14

球場に集結したファンの多くは「オーナーはチームを売却しろ!」というメッセージを込めたTシャツを着てチームに声援を送った。(C)Getty Images

球場に集結したファンの多くは「オーナーはチームを売却しろ!」というメッセージを込めたTシャツを着てチームに声援を送った。(C)Getty Images

 いつもは閑古鳥が鳴いているオークランド・コロシアムに、久々にファンの大歓声がこだました。

 6月13日(現地)、アスレティックスがレイズを迎えた一戦に集まったファンの数は2万7759人。一般的な基準に照らせば、それほど多い数字ではない。だが今季、コロシアムでの火曜日のナイターの平均動員数は3913人だったことを思えば、大盛況と言っていい。

 これは、あるファンがラスベガス移転を目指す球団への抗議として考案した「逆ボイコット」の結果だった。

 発起人は、地元で高校の野球部監督を務めるステュ・クレイリー。4月14日、クレイリーはツイッターにA'sファンにこう呼びかけた。
「僕たちファンが問題の原因ではないことをMLBと国中に示すために、平日の夜にコロシアムを埋めよう」

 先日、アスレティックスはラスベガスに新球場を建設してチームを移転する方針を公表。これに対し、オークランドのファンからは反発の声が上がっていた。

 オーナーのジョン・フィッシャーがラスベガス移転を目論む理由は、オークランドではなかなか新球場を建設できず、慢性的な観客動員難を解決できなかったからだ。

 確かに、アスレティックスは2000年代前半から新球場建設を模索してきたが、地元住民の反対などもあって次々に頓挫。新たな候補地が浮上しては挫折、というパターンを繰り返してきた。
 その意味ではフィッシャーにも同情の余地はある。それでも、ここ数年のフィッシャーとデーブ・カヴァル球団社長の所業は、50年以上もオークランドの地に本拠を置き、栄光の歴史もあるフランチャイズへの冒涜行為にも等しいものだった。

 チームを解体して主力選手をあらかた売り払ったにもかかわらず、チケット代を値上げ。それでいてプロモーション活動はほとんど行わなかった。意図的に観客動員を壊滅的なレベルにまで落ち込ませることで、移転を正当化しようとしたのだ。

 オーナーの狙いは的中した。昨季の1試合平均観客動員はわずか9849人で、もちろんMLB全30球団ワースト。今季は8555人と、昨季をさらに下回っている。

 今回の「逆ボイコット」は、そんなオーナーに対するファンからのせめてもの意趣返しだった。平日のナイトゲーム、しかも相手は不人気球団レイズ。いつもなら最も観客が集まりにくい日を選びながら、今季最多の動員を達成したのだ。球場に詰めかけたファンの多くは「SELL」と書かれた緑のTシャツを着ていた。「チームを売却しろ」というフィッシャーのへのメッセージだ。

 オークランドのファンと言えば、メジャーでは珍しく鳴り物を使った応援をすることでも有名だった。今日も、外野席に陣取った“応援団”が叩き鳴らすドラムの音に合わせて、ファンが選手に声援を送っていた。

 試合もドラマに満ちていた。MLB最低勝率にあえぐアスレティックスが、最高勝率を誇るレイズに逆転勝ち。試合終了の瞬間、コロシアムはまるで優勝が決まったかのような大歓声に包まれた。

 ここに至って、A'sがオークランドに残る可能性は限りなくゼロに近い。それでもこの夜は、ファンの意地と誇りが結実した一日として、「オークランド・アスレティックス」の歴史に刻まれるだろう。

構成●SLUGGER編集部
 
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