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魔球スイーパーは諸刃の剣?投手・大谷は「2つの問題点」を克服できるか<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2023.06.15

スイーパーに対応しつつある相手打者に対して投手・大谷はどうアジャストしていくのか。(C)Getty Images

スイーパーに対応しつつある相手打者に対して投手・大谷はどうアジャストしていくのか。(C)Getty Images

 6月16日(現地)、大谷翔平(エンジェルス)はレンジャーズ戦で今季14試合目の先発マウンドに立つ。地区首位の強豪との対戦を前に、改めてここまでの投球を振り返っておこう。

 13試合に先発して5勝2敗、防御率3.32。76.0イニングを投げて、奪った三振は102を数え、これはリーグ2位の数字だ。

 2023年の投手・大谷を語る上で外せないキーワードが「スイーパー」であることに異を唱える者はいないだろう。WBC決勝で盟友マイク・トラウトを三振に切って取ったことで改めて脚光を浴びた“魔球”は、昨季から大谷の新たなメインピッチとなった。今季の投球割合は実に40.1%に達していて、三振全体のおよそ3分の2をこのスイーパーで奪っている。

 ただ、このスイーパーは“諸刃の剣”でもある。投手の責任要素とされる奪三振・与四球・被本塁打のそれぞれ9イニング平均の数字を昨季と比較してみよう。
▼2022 K/9:11.87 BB/9:2.39 HR/9:0.76
▼2023 K/9:12.08 BB/9:4.03 HR/9:1.30

 奪三振率(K/9)は昨季とさほど変わっていないのに対して、与四球率(BB/9)と被本塁打率(HR/9)は大幅に悪化してしまっている。そして、この2つの指標の悪化にスイーパーが密接に関わっているのだ。

 周知のように、ホームベースを横切るように大きく変化するスイーパーは、空振りを奪いやすい一方でコントロールも難しい。ここでの「コントロールが難しい」には2つの側面、すなわち思うようにストライクや空振りが取れないという面と、甘く入って長打を浴びてしまうという面がある。そして、前者が与四球率、後者が被本塁打率の悪化に直結しているのだ。実際、11被本塁打中、実に7本はスイーパーをスタンドまで運ばれた。
 さらに細かく見ていくと、相手チームがスイーパーにしっかり対策を立てていることもうかがえる。月別のスイーパーの被打率と空振り/スウィング率を見てみよう。

3・4月 被打率.082 空振り/スウィング率36.6%
5月  被打率.227 空振り/スウィング率42.2%
6月  被打率.308 空振り/スウィング率27.3%

 3・4月と6月を比べると、被打率は.082→.308、空振り/スウィング率も36.6%→27.3%と劇的に差がある。

 そうなると、今度は大谷がアジャストする番だ。前回のマリナーズ戦では、97球のうちスイーパーはわずか18球で、カッターを31球投じた。今季はあまり投げていないが、21年までの決め球として多用していたスプリッターもある。

 明日の相手は、目下サイ・ヤング賞レースでトップを走るネイサン・イオバルディ。9年ぶりのプレーオフ進出を目指すチームをさらに勢いづかせるためにも、そして投手・大谷個人としても、絶対に負けられない相手だ。打つ方では、ついにホームラン数でアーロン・ジャッジ(ヤンキース)を抜いてア・リーグトップに立つなど絶好調。この勢いをマウンドにも持ち込みたい。

構成●SLUGGER編集部

 
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