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MLB

投手陣は好投も深刻な打撃不振に苦しむヤンキース。右足故障で離脱中の主砲ジャッジの復帰は一体いつになるのか<SLUGGER>

杉浦大介

2023.07.06

復帰時期もまだ定かでないジャッジ。主砲にしてチームリーダーの彼の復活がチームの命運を左右する。(C)Getty Images

復帰時期もまだ定かでないジャッジ。主砲にしてチームリーダーの彼の復活がチームの命運を左右する。(C)Getty Images

 一見するとヤンキースは上り調子に思える。アメリカ独立記念日の7月4日、オリオールズ戦で8対4で勝利を飾り、これで直近14戦中9勝、10戦中7勝。地区首位のレイズにまだ8ゲーム差を付けられてはいるが、ワイルドカード争いでトップを走るオリオールズに2ゲーム差まで迫っている。

 エースのゲリット・コールが安定した投球を続け、6月28日のアスレティックス戦ではドミンゴ・ヘルマンが完全試合を達成。故障離脱していた先発左腕カルロス・ロドンのヤンキースデビューも近づき、ここでまた士気は高まるはずである。
 
 しかし――それでもまだ名門チームのエンジン全開は遠そうではある。なぜなら、右足つま先の負傷で戦列を離れているチームの看板スター、アーロン・ジャッジの復帰の目処が立っていないからだ。
 「走れるようにならないといけない。走れれば、プレーできる。10%の力でしか走れないのなら、チームに貢献できない」

 4日のゲーム前、ジャッジは無念そうな表情でそう述べた。6月3日、ロサンゼルスでのドジャース戦でフェンスに激突して右足親指の靭帯を負傷。キャッチボール、ティー打撃などはできるようになったが、まだランニングがこなせない。だとすれば、カムバックは近いとは言えまい。

 昨季はア・リーグ記録の62本塁打を放ち、今季も離脱前まで打率.291、19本塁打、40打点という好成績。昨オフ、9年3億6000万ドルの巨額契約締結と同時にキャプテンに任命されたことからも明らかな通り、今のヤンキースはジャッジのチームである。スーパースターが不在となり、それまで30勝19敗だったヤンキースが6月4日以降、13勝13敗で踏ん張ってきたのは健闘と言えるだろう。
 ただ、この間、チームのOPS.663はパイレーツ(.655)、ロイヤルズ(.645)に次いでMLBワースト3位。チーム打率.220、1試合平均3.8得点は最下位と打線は低迷。特にDJ・ラメイヒュー、ジョシュ・ドナルドソン、アンソニー ・リゾー、ジャンカルロ・スタントンといったベテランは軒並み低迷している。

「走ること以外にも、打つときには270パウンド(約127kg)の体重を片足にかける。最初は痛みを堪えなければいけないのは分かっている。まずは我慢できる位置まで辿り着かなければいけない」

 そう語っていたジャッジがいつ戻ってこれるのか、そして、復帰後にこれまで通りのパフォーマンスを披露できるかが気になるところだ。

 1ヵ月後に迫ったトレード期限では、ヤンキースは例年通りに補強に動くだろう。すでにコディ・ベリンジャー(カブス)、ランダル・グリチック(ロッキーズ)、トミー・ファム(メッツ)、ジョク・ピーダーソン(ジャイアンツ)、そしてラーズ・ヌートバー(カーディナルス)といった実績ある外野手の名前が獲得候補として挙がっている。

 それでも、ここでどんな選手を得ようと、現実的にジャッジ抜きにヤンキースの上位進出は考え難い。

「今季ここまで、選手たちの頑張りを嬉しく思っている」

 アーロン・ブーン監督はそう述べてはいたが、ヤンキースは単に競い合うだけでなく、常勝が義務付けられたチームである。勝つために、全開の主砲は不可欠。今後、誰がトレードで獲得されようと、伏兵たちがどれだけ奮闘しようと、ニューヨークの暑い夏の最中、ファンの視線は何よりもジャッジの爪先に注がれ続けることになるのだろう。

文●杉浦大介

【著者プロフィール】
すぎうら・だいすけ/ニューヨーク在住のスポーツライター。MLB、NBA、ボクシングを中心に取材・執筆活動を行う。著書に『イチローがいた幸せ』(悟空出版 )など。ツイッターIDは@daisukesugiura。
 
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