高校野球

肥満気味の体型や故障癖、一線級投手への対応力...高校通算140本塁打を誇る佐々木麟太郎(花巻東)の“不安要素”を検証する<SLUGGER>

西尾典文

2023.08.07

いよいよ高校最後の夏を迎えた佐々木。甲子園の大舞台で実力を証明できるだろうか。写真:THE DIGEST写真部

 6日に開幕した夏の甲子園。今年も多くの将来有望な選手が出場するが、中でも最注目の存在と言えるのはやはり佐々木麟太郎(花巻東)だろう。これまでに積み上げた高校通算本塁打数は140本。練習試合の数や相手のレベルに左右されるとはいえ、これだけホームランを打ち続けられるというのはやはり並みの選手ではない。

 しかしそんな佐々木だが、その実力を疑問視する声が多いのも事実だ。不安要素としては体重113㎏という体型、故障の多さ、ファースト以外守れない守備、レベルの高い投手に対して結果を残せていない、などというものが挙げられる。

 確かに、肥満体型のいわゆる"ドカベン"タイプのスラッガーは高校野球では評判になっても、その後は苦しむというケースは多い。ただ、近年を見ると中村剛也(西武)を筆頭に山川穂高(西武)、井上晴哉(ロッテ)などが主力となっており、リチャード(ソフトバンク)や渡部健人(西武)もブレイクの兆しを見せている。また中田翔(巨人)も高校時代は太りすぎという声もあったが、球界を代表する強打者となった。

 無駄な脂肪が多すぎることはあらゆる面でプレーの障害となり、故障にもつながるのは確かだが、打球を遠くへ飛ばすためには体重が必要だということも常識となっている。
 
 佐々木も入学直後の体重は117㎏で肥満のように見えたが、この2年間で身体つきは引き締まっており、改善していることがうかがえる。故障についても、投手の肩のように選手生命にいきなり直結するようなものではなく、これからしっかりトレーニングを積んでいけば解消される可能性が高いのではないだろうか。何より、140本ものホームラン打つだけ試合に出続けていたというのは身体の強さもある程度備えているということを証明していると言えるだろう。

 守備に関しても、プロではファーストか指名打者になる可能性が高いが、現在のプロ野球界を見ると以前のようにスラッガータイプの外国人選手が活躍できておらず、どの球団も長打力のある選手の需要が高まっていることを考えるとそれほど大きなネックになるとは考えづらい。岡本和真(巨人)も高校時代は同様の懸念がささやかれていながら、プロでは守備力も上がっていっただけに、指名打者制のないセ・リーグでもその打撃を高く評価して指名に踏み切る球団が出てくることも考えられる。

 レベルの高い投手への対応については、2年春に出場したセンバツで市和歌山の米田天翼(現東海大)の高めのストレートに封じ込められた印象から出ているものと思われる。しかし、この時は両肩の手術後で練習が不足していた状態の出場であり、時期が異なっていれば違う結果となったことも十分に考えられる。
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