高校野球

長距離砲としての魅力をアピールした広陵・真鍋。ストライクを全球振りに行った積極性も◎【甲子園6日目のプロ注目選手】<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2023.08.12

一発こそ出なかった真鍋だが、大きな当たりを2本放ち、スラッガーとしての潜在能力をアピールした。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 今大会、ドラフト候補として佐々木麟太郎(花巻東)に次ぐ注目を集めているのが真鍋慧(広陵)だ。入学直後から名門・広陵で中軸を任され、1年秋、2年秋に出場した明治神宮大会では計3本のホームランを放ち、チームの2年連続準優勝に貢献。センバツでも本塁打こそないものの、2年春は打率.571、3年春は.429と力を発揮している。

 これだけの結果を残していれば、当然相手チームからのマークは厳しくなり、今年のセンバツ以降はなかなか本来のバッティングを見せることができていなかったが、夏の広島大会では準決勝で打った瞬間それと分かるホームランを放ち、復調を印象づけた。

 迎えた夏の甲子園、対戦相手は同じ中国地区の強豪・立正大淞南(島根)で、チームは5回までリードを許す苦しい展開だったものの、真鍋自身は第1打席にレフト前ヒット、逆転した6回の第4打席では左中間に満塁の走者を一層するタイムリーツーベースを放ち、2安打3打点の活躍でチームの勝利に大きく貢献した。

 左中間へのツーベースは風に流されて相手のセンターとレフトが交錯する幸運もあったものの、打球の飛距離と滞空時間は十分なものがあり、改めてそのパワーが高校生離れしていることを証明した。また、第3打席のセンターフライも左中間の広い甲子園でなければフェンスまで届いていた可能性は高い。普段の練習でもセンターから逆方向に大きい当たりを打てるように練習しているとのことだったが、引っ張るだけでなく広角に長打力を発揮できるのは大きな魅力だ。
 左打者がセンターから左方向へ大きな当たりを打とうとすれば、それだけボールを長く見て強く振る必要があり、自然と誘うような変化球の見極めも良くなる。もちろんパワーがなければできない技術だが、それを可能にするだけのスウィングの力が真鍋には備わっていることは間違いない。

 そしてこの日、もう一つ目立ったのが積極性だ。5打席で見送りのストライクは1つもなく、ストライクゾーンに来たボールはすべてスウィングすることができていたのだ。簡単に聞こえるかもしれないが、これはなかなかできることではない。厳しいマークの中でプレーしてきて、打てるボールが限られていることをよく分かっているからこそ、これだけしっかり振ることができていたのだろう。

 また、ただ闇雲に振っているのではなく、自分の形でスウィングしており、空振りも一度もなかった。最終打席にストレートの四球となったのも、この真鍋の姿勢に相手バッテリーがストライクゾーンを簡単に投げられなかった結果と言える。

 甲子園で待望の一発こそ出なかったものの、やはりその長距離砲としての資質は十分に感じさせてくれた。次戦は優勝候補にも挙げられる慶応(神奈川)との対戦となるが、そこでもこの日見せた積極的な姿勢で自慢の強打を見せてくれることを期待したい。

構成●SLUGGER編集部

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