オリックスファンにとって、今でも忘れられない試合がある。今から12年前、2011年10月18日のソフトバンク戦だ。勝てばCS進出という大切な試合を落とし、チームはわずか勝率1毛差で西武に3位の座を明け渡してしまった。この試合で4番を務めたT-岡田は、前年に本塁打王のタイトルを獲得したが、この年は不振が続き、その日も4打数無安打と精彩を欠いた。
「一球一球集中する姿勢だけは絶対に持ってほしい」オリックスに黄金期をもたらした中嶋監督の“言葉の力”【オリ熱コラム2023】
試合後、当時の岡田彰布監督は「正直、今年1年間、バッティングしとらんとちゃうかな。二軍に何度も行かすことも考えたけど正直言って“お仕置きの4番”やから。来年以降、4番打たすつもりはないけど、本人がどう野球に接していくかやな」と辛辣な言葉を述べている。岡田監督は監督就任1年目に「T-岡田」に改名させて売り出した経緯があり、愛ある叱咤だったのだろう。この発言を岡田は現在もしっかり覚えているという。
あれから12年が経ち、チームはリーグ3連覇を成し遂げるほどの常勝球団に成長した。岡田は今年は本塁打0と信じられない成績となっており、二軍での生活も長かったが、本拠地での優勝がかかった20日のロッテ戦に一軍に昇格。中嶋聡監督は7番ファーストで即スタメンで起用した。メンバー発表された時のスタンドのどよめきと大歓声は、ファンと岡田の揺るがぬ信頼関係から来ていると言ってもいい。岡田は第2打席でセンター前へ運ぶと、7回に回った第3打席では相手ピッチャーが威圧される形で四球で出塁。この回のミラクル逆転劇に大きく貢献した。
試合後、岡田は「『今日は代走で用意しておいてくれ』と言われてて、スタメンはないんかなと思っていたので、試合前にメンバー表を見てビックリした」と話した。岡田に「代走」の準備を促す時点で壮大なフリだった気もするが、余計なプレッシャーを与えない配慮だったのだろう。3連覇については「嬉しい」としながらも「僕の知ってるチームじゃないような感じがありますけど、まあ最後呼んでもらって、やっぱり監督に感謝したい」と語った。中心メンバーとして長らく暗黒時代を経験した選手なだけに、感慨深いものがあるようだ。
ファンの大声援には「めちゃくちゃ嬉しかったですね。 あのフォアボールも、やっぱり球場の雰囲気があのボールをフォアボールにしてくれた。打ちたかったんですけど、しっかりつなごうっていう思いで打席に入ったので」と、大きな力になったことを認めた。また、第2打席のヒットについては「点にはつながらなかったんですけど、上がってきて1本出たっていうことは、 僕の中ではすごいホッとするんじゃないけど、 そういうものもありましたし。ベンチに帰ってきて、みんな喜んでくれたので良かったですね」と振り返っている。
チームは若い選手が続々と台頭してきているが「正直、自分のことで精一杯の部分もありましたけど、一軍の試合をずっと見てましたし、ファームでずっとね、本当に若い子たちで野球してて、いろいろな思いがありましたし。まだまだ負けたくない気持ちはずっと持ってやってるので、本当に刺激をもらいながらというか、自分も何とか成長できるようにというところはありました。あの、身体が動くうちは、まだまだ頑張りたいと思います」とファンにとっては嬉しい発言も聞くことができた。
最後に今のチームについて「やっぱ、2年ぐらい前からずっと監督がおっしゃってる『全員で勝つ』っていうか、今年に関しては、(吉田)正尚が抜けて、シーズン前ではやっぱり評価下がってたと思うんですけど、ホントにチーム一丸となって試合に臨めていたのがこういう結果につながっていくと思いますし、そのまとまり方が(以前とは)違うところじゃかいかと思います」とベテランだからこそ分かる分析をしていたのが印象的だ。
このままオリックスとセ・リーグ覇者の阪神が日本シリーズで対決することになれば、岡田と岡田監督の師弟対決も実現することになる。12年越しに“お仕置きの4番”を挽回するチャンスが近くまで迫っている。
取材・文●どら増田
【著者プロフィール】
どらますだ/1973年生まれ。プロ野球では主にオリックスを取材し、週刊ベースボールの他、数々のウェブ媒体でも執筆している。書籍『ベースボールサミット 第9回 特集オリックス・バファローズ』(カンゼン)ではメインライターを務めた。プロレス、格闘技も取材しており、山本由伸と那須川天心の“神童”対談を実現させたことも。
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あれから12年が経ち、チームはリーグ3連覇を成し遂げるほどの常勝球団に成長した。岡田は今年は本塁打0と信じられない成績となっており、二軍での生活も長かったが、本拠地での優勝がかかった20日のロッテ戦に一軍に昇格。中嶋聡監督は7番ファーストで即スタメンで起用した。メンバー発表された時のスタンドのどよめきと大歓声は、ファンと岡田の揺るがぬ信頼関係から来ていると言ってもいい。岡田は第2打席でセンター前へ運ぶと、7回に回った第3打席では相手ピッチャーが威圧される形で四球で出塁。この回のミラクル逆転劇に大きく貢献した。
試合後、岡田は「『今日は代走で用意しておいてくれ』と言われてて、スタメンはないんかなと思っていたので、試合前にメンバー表を見てビックリした」と話した。岡田に「代走」の準備を促す時点で壮大なフリだった気もするが、余計なプレッシャーを与えない配慮だったのだろう。3連覇については「嬉しい」としながらも「僕の知ってるチームじゃないような感じがありますけど、まあ最後呼んでもらって、やっぱり監督に感謝したい」と語った。中心メンバーとして長らく暗黒時代を経験した選手なだけに、感慨深いものがあるようだ。
ファンの大声援には「めちゃくちゃ嬉しかったですね。 あのフォアボールも、やっぱり球場の雰囲気があのボールをフォアボールにしてくれた。打ちたかったんですけど、しっかりつなごうっていう思いで打席に入ったので」と、大きな力になったことを認めた。また、第2打席のヒットについては「点にはつながらなかったんですけど、上がってきて1本出たっていうことは、 僕の中ではすごいホッとするんじゃないけど、 そういうものもありましたし。ベンチに帰ってきて、みんな喜んでくれたので良かったですね」と振り返っている。
チームは若い選手が続々と台頭してきているが「正直、自分のことで精一杯の部分もありましたけど、一軍の試合をずっと見てましたし、ファームでずっとね、本当に若い子たちで野球してて、いろいろな思いがありましたし。まだまだ負けたくない気持ちはずっと持ってやってるので、本当に刺激をもらいながらというか、自分も何とか成長できるようにというところはありました。あの、身体が動くうちは、まだまだ頑張りたいと思います」とファンにとっては嬉しい発言も聞くことができた。
最後に今のチームについて「やっぱ、2年ぐらい前からずっと監督がおっしゃってる『全員で勝つ』っていうか、今年に関しては、(吉田)正尚が抜けて、シーズン前ではやっぱり評価下がってたと思うんですけど、ホントにチーム一丸となって試合に臨めていたのがこういう結果につながっていくと思いますし、そのまとまり方が(以前とは)違うところじゃかいかと思います」とベテランだからこそ分かる分析をしていたのが印象的だ。
このままオリックスとセ・リーグ覇者の阪神が日本シリーズで対決することになれば、岡田と岡田監督の師弟対決も実現することになる。12年越しに“お仕置きの4番”を挽回するチャンスが近くまで迫っている。
取材・文●どら増田
【著者プロフィール】
どらますだ/1973年生まれ。プロ野球では主にオリックスを取材し、週刊ベースボールの他、数々のウェブ媒体でも執筆している。書籍『ベースボールサミット 第9回 特集オリックス・バファローズ』(カンゼン)ではメインライターを務めた。プロレス、格闘技も取材しており、山本由伸と那須川天心の“神童”対談を実現させたことも。
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