優勝マジック2になっていたオリックスが9月20日、本拠地での2位ロッテ戦に勝利して、リーグ3連覇を成し遂げた。
今年のオリックスは、昨年までの連覇に大きく貢献した主砲の吉田正尚がレッドソックスへ移籍。大きな戦力ダウンは否めないとして、開幕前の評論家の順位予想はあまり高くなかった。しかし昨シーズンが終了した時点で、私は3連覇を確信していた。それは中嶋聡という監督が、なかなかの策士だと取材を通じて感じたからである。
吉田正の穴を埋めるべく、西武から森友哉をFAで獲得。森は「中嶋監督のもとで野球がしたい」という気持ちでオリックスを選んだために、「自分が来て優勝できなかったとは言われたくない」と、3月に行われたWBCの出場を見送ってでも、オリックスの新たな主砲になるべく練習に時間を割いた。キャンプが始まると森はすぐにチームに溶け込んで、シーズンが始まる頃には主砲として、3番ないし4番に抜擢されていた。途中で怪我による離脱もあったが、森の存在はチームを幾度となく救い、首脳陣の期待に応えている。
また、そんな森に刺激を受けたのか、頓宮裕真も一発のあるアベレージヒッターとして開花。シーズン終盤まで首位打者争いを繰り広げるチームの顔となった。また森とは高校時代からの盟友である若月健矢も、捕手ながら森の離脱中には打撃でもチームに貢献していた。
投手陣ではエースの山本、宮城大弥、そして山崎福也、田嶋大樹といったタレントたちに加え、プロ初登板が開幕戦となった山下舜平大、後半戦からローテに加わった“無敗の男”東晃平が台頭。山岡泰輔が後半戦から中継ぎに回ったことにより、さらに投手陣に厚みをもたせることに成功した。
鉄壁とも言われる中継ぎ陣は、山田修義、比嘉幹貴、小木田敦也、宇田川優希、阿部翔太、山崎颯一郎、平野佳寿を中心に「3連投はさせない」というチーム方針のもとで運用。それでも怪我や体調不良で離脱者が出たこともあったが、近藤大亮、吉田凌、本田仁海、黒木優太ら控えメンバーがその穴をカバーした。
今年はこれまでの2年のように、印象に残ったミラクルゲームが少ないシーズンだった。これは打線の不振が続いていたのが大きな原因だろう。終盤は特に貧打に喘ぐ試合も多く、投手力で勝って来たと言っても過言ではない。中川圭太、森、頓宮の中軸3人がつながれば大量点も期待できるが、逆に誰かひとりが不振になると、とことん打てなくなってしまう。
そんな状態でも中嶋監督は何とかやり繰りして、今年は2位以下に大差をつけて優勝した。これは、オリックスという暗黒時代をさんざん味わったチームが、ようやく黄金時代に突入したことを意味するのではないだろうか。来年も主力選手の退団が予想されるが、そこで現れた山下という近未来のエース候補が築く時代を見てみたい。打撃でも紅林弘太郎や宜保翔といった若い選手たちが、次代の担い手にならなければいけないだろう。
中嶋監督は昨年の日本シリーズで一軍未登板の山下を帯同させ、登板はさせずとも大舞台の空気を吸わせている。もしかしたらこの時点で、山下の開幕投手を決めていたのかもしれない。本人が口を割らないため確実なことは分からないが、中嶋監督はそれぐらいの緻密さがあっても不思議ではない策士なのだ。中嶋監督が導いたオリックスの黄金時代は始まったばかり。ここからどんなチームづくりをしていくのか、その“策士ぶり”を引き続き注視していきたい。
取材・文⚫︎どら増田
今年のオリックスは、昨年までの連覇に大きく貢献した主砲の吉田正尚がレッドソックスへ移籍。大きな戦力ダウンは否めないとして、開幕前の評論家の順位予想はあまり高くなかった。しかし昨シーズンが終了した時点で、私は3連覇を確信していた。それは中嶋聡という監督が、なかなかの策士だと取材を通じて感じたからである。
吉田正の穴を埋めるべく、西武から森友哉をFAで獲得。森は「中嶋監督のもとで野球がしたい」という気持ちでオリックスを選んだために、「自分が来て優勝できなかったとは言われたくない」と、3月に行われたWBCの出場を見送ってでも、オリックスの新たな主砲になるべく練習に時間を割いた。キャンプが始まると森はすぐにチームに溶け込んで、シーズンが始まる頃には主砲として、3番ないし4番に抜擢されていた。途中で怪我による離脱もあったが、森の存在はチームを幾度となく救い、首脳陣の期待に応えている。
また、そんな森に刺激を受けたのか、頓宮裕真も一発のあるアベレージヒッターとして開花。シーズン終盤まで首位打者争いを繰り広げるチームの顔となった。また森とは高校時代からの盟友である若月健矢も、捕手ながら森の離脱中には打撃でもチームに貢献していた。
投手陣ではエースの山本、宮城大弥、そして山崎福也、田嶋大樹といったタレントたちに加え、プロ初登板が開幕戦となった山下舜平大、後半戦からローテに加わった“無敗の男”東晃平が台頭。山岡泰輔が後半戦から中継ぎに回ったことにより、さらに投手陣に厚みをもたせることに成功した。
鉄壁とも言われる中継ぎ陣は、山田修義、比嘉幹貴、小木田敦也、宇田川優希、阿部翔太、山崎颯一郎、平野佳寿を中心に「3連投はさせない」というチーム方針のもとで運用。それでも怪我や体調不良で離脱者が出たこともあったが、近藤大亮、吉田凌、本田仁海、黒木優太ら控えメンバーがその穴をカバーした。
今年はこれまでの2年のように、印象に残ったミラクルゲームが少ないシーズンだった。これは打線の不振が続いていたのが大きな原因だろう。終盤は特に貧打に喘ぐ試合も多く、投手力で勝って来たと言っても過言ではない。中川圭太、森、頓宮の中軸3人がつながれば大量点も期待できるが、逆に誰かひとりが不振になると、とことん打てなくなってしまう。
そんな状態でも中嶋監督は何とかやり繰りして、今年は2位以下に大差をつけて優勝した。これは、オリックスという暗黒時代をさんざん味わったチームが、ようやく黄金時代に突入したことを意味するのではないだろうか。来年も主力選手の退団が予想されるが、そこで現れた山下という近未来のエース候補が築く時代を見てみたい。打撃でも紅林弘太郎や宜保翔といった若い選手たちが、次代の担い手にならなければいけないだろう。
中嶋監督は昨年の日本シリーズで一軍未登板の山下を帯同させ、登板はさせずとも大舞台の空気を吸わせている。もしかしたらこの時点で、山下の開幕投手を決めていたのかもしれない。本人が口を割らないため確実なことは分からないが、中嶋監督はそれぐらいの緻密さがあっても不思議ではない策士なのだ。中嶋監督が導いたオリックスの黄金時代は始まったばかり。ここからどんなチームづくりをしていくのか、その“策士ぶり”を引き続き注視していきたい。
取材・文⚫︎どら増田
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