今年は投手の豊作年とあって、２巡目までに19人、支配下指名72人中47人を占める空前の投手ドラフトになった。故に、チーム事情に合わせた野手を逃さず指名できたかも重要と言えよう。投手と野手の顔ぶれだけでなく、編成上の狙いや将来の見通しなどを加味して評価した。

【氏原英明のドラフト採点：セ・リーグ編】リーグ優勝の阪神はドラフトでも成功。渡会を狙った中日、DeNA両球団の評価は……？＜SLUGGER＞

▼中日
評価：Ｃ＋

１位の草加勝（亜細亜大）はこの一年で球速と変化球のキレが大幅にアップしたが身体は未完成と、さらなる成長の可能性を秘める。２位の津田啓史（三菱重工EAST）、３位の辻本倫太郎（仙台大）は技術的には粗いが、身体能力が高く、プロの環境で磨き上げたい好素材。さらに下位指名にパワーあふれる投手を並べるなど、指名した選手は軒並み将来性が高く期待が持てる。現場の意見が強いと報じられる歪んだ編成状況が正され、既存戦力と使い分けが出来れば、後に転換期と評せる年となるだろう。

▼北海道日本ハム
評価：Ｂ

１位の細野晴希（東洋大）は世代屈指のスケールを宿す投手で、将来的なMLB挑戦も標榜できる逸材。２位の進藤勇也（上武大）は久々に大学野球界に現れた大物捕手で、捕手能力は他の追随を許さない。３位の宮崎一樹（山梨学院大）のように守備走塁が強みの選手と、４位の明瀬諒介（鹿児島城西高）、５位の星野ひので（前橋工高）など、打撃が強みの選手を抑えることで野手を活性化させ、戦力を底上げする意思を見せた。投手にゆとりのないチームが、投手の豊作年で指名をセーブしたのは気になるが、能力の高い選手たちの将来に期待したい。

▼東京ヤクルト
評価：Ｂ－

１位の西舘昂汰（専修大）は188cm・92kgの恵まれた体格で、球威だけでなく、高いスタミナも持つ本格派。リーグ戦を経るたびに成長する投球術は、さらに伸びる可能性も感じさせる等、将来のエース候補として申し分ない。下位ではチーム事情に合った野手を指名した他、松本健吾（トヨタ自動車）と石原勇輝（明治大）のように、強いストレートと実戦的な変化球を持つ投手を指名するなど、全体のバランスは悪くない。イニングを稼ぐ投手が必要なチーム事情を、指名した投手陣で満たせるか注目だ。 ▼埼玉西武
評価：Ｂ－

ヤクルト、ソフトバンクとの競合を経て指名権を得た１位の武内夏暉（国学院大）はコントロールが良いだけでなく、球の出所のみにくさ、間合いを変える器用さも併せ持つ。空振りを無理に奪いにいかず、時に打ち取る選択も厭わない投球術は、内野の守備が良い埼玉西武にベストマッチ。得点力が課題ながら野手の指名を控えたが、糸川亮太（ENEOS）のように動かすボールを持つ投手や、杉山遙希（横浜高）や成田晴風（弘前工高）のように直球で空振りを奪える有望株を抑えるなど、バラエティに富んだ投手を揃える事には成功した。

▼巨人
評価：Ｂ

１位の西舘勇陽（中央大）は力強い直球、実戦的な変化球、無尽蔵のスタミナと併せ持ち、将来の投手陣の柱に相応しい。先発でも中継ぎでも存在感を示せるだろう。２位以降の指名はすべて社会人選手だが、森田駿哉（ホンダ鈴鹿）と又木鉄平（日本生命）は左腕ながら直球に威力があり、佐々木俊輔（日立製作所）と泉口友汰（NTT西日本）は、走守に隙がなく、打撃にもスケールを宿すなど、レギュラー争いに食い込む資質を持つ。２年連続Ｂクラスを良しとせず、優勝に本気なことを示した異色のドラフトを評価したい。

▼楽天
評価：Ａ－

　常広羽也斗（青山学院大→広島）の外れ１位で指名した古謝樹（桐蔭横浜大）は、左腕離れした150キロ超の直球と鋭い変化球を、独特なアングルから投げ下ろすパワー型。また、坂井陽翔（滝川二高）、日當直喜（東海大菅生高）と、順位が一つ上でもおかしくない高校生投手を抑えつつ、ワォーターズ璃海ジュミルや青野拓海など将来が楽しみな素材型も指名。さらに中島大輔のように、すぐにでも一軍を窺える外野手まで確保するなど、「現在」と「将来」のバランスが素晴らしい。過去のドラフトを補うかのような、再建的要素が含まれた指名を称賛したい。