プロ野球

なぜ岡田阪神はライバル球団を圧倒できたのか? 日本一に導いた65歳監督の“絶妙なコミュニケーション術”

チャリコ遠藤

2023.11.14

阪神を日本一に導いた岡田監督。どのように選手とコミュニケーションをとっていたのか? 写真:野口航志

 最後までやることなすことすべてうまくいった。その強さが勢いだけでないことが分かっているから余計に凄みを感じる。2位・カープににつけたゲーム差は11・5。2023年の阪神タイガースは、圧倒的な強さでペナントレースを制した。率いたのは、15年ぶりの復帰となった岡田彰布監督。卓越した野球観と熟練の采配を駆使し、ブランクを感じさせない手綱さばきで若手主体のチームを日本一まで導いてみせた。

 岡田野球の特色はいくつかある。開幕前に指揮官の発案で決めた年俸における四球への査定率アップ。「四球を選べ」ではなく「ボール球を振るな」という、同じようで実は少し違う指示のもと選球眼が研ぎ澄まされたチームは今季、12球団最多494個の四球を選んで得点機を生み出した。昨年までの盗塁のグリーンライトを廃止し、一部の選手を除いては監督のサインで走らせたことも1つ。昨秋から着手した二塁・中野拓夢のコンバートや一塁・大山悠輔の固定もハマった。守りの野球が前提ながら、色とりどりの"岡田色"が随所にかみ合って他球団を圧倒。ただ、本稿では少し切り口を変えて分析してみたい。
 
 ここ数年のチームは長年中核を担ってきたベテランがチームを去り、若手主体。65歳の現役最年長監督がどのように"今どき"の選手たちとコミュニケーションを取ってひとつにまとめていくのか――。就任当初、そんな部分に注目していた。それは、前任の矢野燿大監督の選手への対応を目にしてきたからだ。矢野監督はキャンプ中から積極的にミーティングを開催し、自身の考えや野球選手のあり方などを自身の言葉で伝達。時に他業界の講師も招くなど、選手たちの現役引退後のセカンドキャリアまでも見据えていた。一方でグラウンドでは「超積極」「諦めない」「誰かを喜ばせる」の3本の矢を就任時から掲げて、選手が秘める潜在能力の開花を促しながら指揮。先述の盗塁のグリーンライトで言えば矢野監督は選手の積極性にかけ完全フリーとした。また、選手が無気力に見えるプレーを目にした時には試合後に涙を流して叱責。情にも訴えながら勝利を目指して戦っていた。
 
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岡田監督は選手をどのように指導したのか?