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プロ野球

オリックスと阪神の新旧対決は“旧”の阪神に軍配。古めかしくも情のある選手起用で岡田阪神が勝ち取った日本一<SLUGGER>

氏原英明

2023.11.06

66歳の岡田監督は12球団で最年長。年の功と情の采配で宙に舞った。写真:野口航志

66歳の岡田監督は12球団で最年長。年の功と情の采配で宙に舞った。写真:野口航志

 新しいものは一つとしてなかった。

 ただ、その古さが逆に必要なものであると感じたのもまた事実である。

 11月5日、阪神が38年ぶりの日本一に輝いた。その戦いぶりは20年前にも戻ったような、そんな感覚にさせられた。

 例えば、日本一を決めた日の投手起用。それは昨今では考えられないものだった。

 現代のプロ野球は投手起用において分業制が主流だ。逆算から「勝利の方程式」が始まり、クローザー、セットアップマンがいて、そこまでをどのようにマネジメントするかを考えていく。過去には岡田彰布監督もJFKを重用したように、分業が今の野球だ。

 ところが、シリーズ第7戦で阪神は青柳晃洋が先発。6点リードの5回裏一、二塁のピンチで、左腕の島本浩也を投入するという現代野球の一端を見せた後は、本来先発の伊藤将司が登板すると、8回までの3イニングを投げたのだ。まるで昔の野球に戻ったかのようだった。

 実は、阪神は前日の第6戦でも同じようにスターターを2枚並べる起用をしている。村上頌樹を先発させ、6回からの3イニングは西勇輝が登板したのだ・

 この試合後、岡田彰布監督は自身の起用の意図をこう話している。
 
「今日は勝っていても、2番手は西勇で行くつもりやったよ。最後は分からんかったけどな。中継ぎを使わなくてよかった? 別に休ませるつもりはなかった。短期決戦で、投手を休ませることなんてないよ。勝つためにやっている。そのためにベンチに入れてるんやから」

 リリーバーはあくまでスペシャリスト。サウスポーなら左打者に当て、イニング途中の大ピンチはそこに強い選手を起用する。サウスポーは島本や桐敷拓馬、右腕は石井大智や湯浅京己だった。

 シリーズ前、阪神とオリックスの対決は新旧の野球のぶつかり合いだと思っていた。

 投手起用から野手のオーダーまで、先進的な野球を展開してリーグ3連覇を果たしたオリックスと、少し時代錯誤と思えるような考え方の岡田阪神のぶつかり合い。それほどまでに両者は真逆の考えを有しているチームだった。

 試合前のシートノックを、オリックスは7戦とも実施していない。疲労軽減の意味もあるが、その時間を違うもののために使うのだ。一方、阪神は全試合でシートノックを実施していた。阪神のノック中、オリックスベンチはもぬけの殻。それくらい両軍の差は一目瞭然だった。

 オーダーは阪神がほとんど固定だった一方、オリックスはさまざまな選手を入れ替えた。「選手は全員が戦力」と標榜するオリックスに対し、レギュラーに責任と覚悟を与えて自覚を求める。それが阪神だった。

 そうした使い方の固定は選手に役割をはっきりと認識させた。イレギュラーなこともあるが、それらも戦い方と理解していて、臨機応変に対応できるのだ。
 

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