専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
MLB

カブスはどこまで本気だったのか?ウィンター・ミーティングの現場から見た“大谷争奪戦狂騒曲”の顛末<SLUGGER>

ナガオ勝司

2023.12.12

カブスのホイヤー編成総責任者。大谷についても終始“沈黙”を貫いた。(C)Getty Images

カブスのホイヤー編成総責任者。大谷についても終始“沈黙”を貫いた。(C)Getty Images

 大谷翔平がドジャースと10年総額7億ドルの契約を交わした、というニュースが流れた時、カブスの地元シカゴのファンの反応は「まあ、最初からそう決まってたんじゃねーの」的な感じだった。

【関連記事】契約総額7億ドルでも年俸はたった200万ドル!?大谷が提案した前代未聞レベルの「後払い」の詳細が明らかに<SLUGGER>

 カブスが「最後の5球団に残っている」と報道され、「それって可能だと思う?」と尋ねてきた近所のカブスファンの反応もすっかり冷めていて、「とにかく、コディ(・ベリンジャー一塁手/外野手)と、(先発マーカス・)ストローマンの穴を埋めなくちゃならない」と視線は他所へ向いていた。

 テネシー州ナッシュビルで行われたウインター・ミーティング(WM)で、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督が「翔平と会ったよ」を正直に話したことが唯一の手掛かりで、大谷翔平の獲得劇はずっと推測の域を出なかった。「大谷がブルージェイズのキャンプ施設を訪問した」というスクープめいた報道が出たおかげで、「穴馬ブルージェイズが有力候補になった」などと言われたけれど、それも「(訪問したと)信じられている」という不確かなものだった。

 情報源をより多く持つ米メディアでさえその調子なのだから、我々、日本メディアがスクープなどできるはずがない。本人がインスタグラムで「ドジャース入り」を伝えるまでの日本での報道はほとんどすべて、アメリカの記者経由での発信である。
 
 とは言え、カブスも有力候補だなどと言われていた関係で、普段はMLBネットワークの『Hot Stove』という番組で高みの見物を決め込んでいるはずの私も、WMに駆り出された。実質的には大谷担当の記者の方々のサポート役である。
 12月4日の月曜日、つまりWMの初日、カブス番記者のみのジェネラル・マネージャー(GM)囲み取材に入れてもらった。巨大なリゾート・ホテルの一室にて、少人数でカーター・ホーキンスGMを囲んだ後、番記者の何人かが「カブスは一歩後退したとみられる」とSNSでつぶやいたが、実はホーキンスGM自身が「大谷獲得は難しい」などと言ったわけではない。

 囲み取材の冒頭、地元テレビのキャスターが「大谷の獲得が話題になっているようですが」と切り出したところ、「特定の選手についてはお答えできません。我々はただ、去年よりもいいチームを作りたいと思っているだけです」と言っただけの話だ。

 実はカブスは現政権、つまりジェド・ホイヤー編成総責任者とホーキンスGMがトップに収まって以来、大谷だけではなく、FA市場だけではなく、トレード市場に出ていると言われている他球団の選手たちに対しても、一貫してこの視線を貫いている。沈黙を貫く大谷や彼の代理人に業を煮やした米メディアが「もっと活発に議論できるような状況にした方が、球界の宣伝のためには良いのに」と訴えたが、カブスは過去数年、情報のリーク=漏洩に対しては敏感に察知し続けてきたし、それゆえに地元メディアが「希望的観測」によって、さまざまな選手の獲得予想を報道してきた。
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号