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「何事もすべて受け入れることが大事」――“郷に入っては郷に従え”を実践するカブス今永昇太への高まる期待<SLUGGER>

ナガオ勝司

2024.02.17

“投げる哲学者”の異名を取る今永。柔軟な姿勢でチームに溶け込もうとしている。(C)Getty images

 2月14日、アリゾナ州メサのシカゴ・カブスのキャンプ場でのことだ。

 今永昇太がブルペンに入ると、日米総勢20人あまりのメディアが一斉に、その好奇心に満ちた視線を30歳の左腕に向けた。

 日本人独特の、足を上げてちょっと溜める投球フォーム。アメリカ人の目には新鮮に映ったようで、「ちょっと、ダルビッシュ(有/パドレス)を思い出させる」などと言う人もいた。

 カーブやスライダー、チェンジアップやスプリットなど、変化球を交えながらの全31球。

 今永の球を受けた正捕手ヤン・ゴームズはこう表現した。

「評判通りの球だったね」

 もちろん、キャンプはまだ始まったばかりだ。

 今永はこれから投球練習、ライブBP=打者相手の投球、オープン戦と開幕の準備を進めていくが、今はまだその初期段階だ。

 その辺りはゴームズもよく心得ていて、「今はお互いを理解することが何よりも大事なんだ」と淡々と答え、それ以上はメディアが喜びそうなコメントを口にしなかった。

 もちろん、それは今永も同じである。

「屋外で、土のマウンドで初めて投げたわりには良かったと思いますし、これからどんどん自分の改善点も見つかってくるだろうし、それを克服していくことがすごく楽しみです」

【画像】今永昇太が先発したWBC決勝をプレイバック!
 真っすぐは遠目に見てもキレがあったし、ゴームズのミットを突き上げるように小気味良い音を立てていた。変化球については本人が、「まとまりはあったんですけど、細かいところはまだまだこれからだなというところがあった」と言うぐらいだから、不満もあったのだろうけれど、彼はメジャーの新人にして、プロ野球選手としては9年目のベテランである。

 たとえば、iPadでボールの解析データを見ながら投げていたことについて尋ねると、こんな答えが返ってくる。

「スライダー、カーブ、チェンジアップの曲がり幅がラボと比べてどうなのかを比べてました。スライダーもよく動いてましたし、チェンジアップも悪くない軌道だった。これからこの気候に慣れて、グリップにもしっかり慣れて、常に良い変化球が投げられるような準備をしていきたい」

 彼が言う「ラボ」というのは、Laboratory=実験や研究を行うための施設であり、カブスは室内練習場の一部が投球解析用の投球練習場になっている。ラボでは全方位からの映像で投球フォームを分析できるし、球の回転数や回転軸、速球のホップ要素や変化球の上下と横幅など、かなり詳細に分析され、それを即時に映像化及び数値化できるようになっている。

 それを説明してくれたのは、投球練習をする今永に、手にしたiPadを見せていたトミー・ホットビー投手コーチである。

「日本でもラプソードは多く使われていると思うけれど、ここではトラックマンを使っている。ラプソードも良いんだけど、トラックマンではもっと多くのことが解析できる。トラックマンはラプソードよりも詳細な動きが解析できるし、回転数のデータから、球がどのように変化するのかを正確に予測できるんだ」

「だから彼には、トラックマンがどのようなものなのか、どれぐらい一貫したデータを取得できるのかを把握してもらい、彼がスライダーの精度を高めるための手がかりになればいいと思っているんだ」
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「何事もすべて受け入れることが大事。新しいことをしっかり取り入れてやっていく」