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対NPB初戦でみせた泥臭さ。ファーム新規参入球団「くふうハヤテ」が垣間見せた実力とこれからの課題

岩国誠

2024.03.04

NPB相手にチーム初打点を挙げた倉本。粘り強いバッティングを見せた。写真:岩国誠

 今季からファーム・リーグに新規参入する「くふうハヤテベンチャーズ静岡」は2日、ナゴヤ球場で行われた春季教育リーグ・中日戦で既存のNPB球団と初めて対戦。記念すべき初戦を2対2の引き分けに持ち込んだ。

 前日から開幕した春季教育リーグだったが、バスで約3時間かけてナゴヤ球場に到着した直後にグラウンドコンディション不良で中止に。仕切り直しとなったこの日、チームの記念すべき初戦を前に赤堀元之監督(53)は選手たちにこう伝えていた。
 
「初戦なので本当に泥臭くというか。スマートにやるのではなく、しっかり向かっていく泥臭さ、何がなんでもっていう感じでやろう」

 先発を託されたのは、三重県出身で名古屋にある星城大卒の技巧派左腕・奥田域太(22)。「テンポの良さが持ち味になりつつあるので、いつもと変えずに自分のスタイルのピッチングで」と中村勝投手コーチのアドバイスを胸に記念すべきマウンドに登った。

 初回に二死二、三塁のピンチを切り抜けると、そこからは本領発揮。持ち前の小気味よい投球テンポから繰り出される多彩な変化球で、3回までスコアボードにゼロを並べていった。

 試合が動いたのは4回表。ここまで中日先発・松葉の前に無安打だった打線が、一死から2番・瀬井裕紀(24 ・九州アジアリーグ熊本)の左中間を破るチーム初安打。ボールが外野フェンスへと転がる間に一気に三塁を陥れ、3番・倉本寿彦(33・元DeNA/日本新薬)へとつなげた。

「このランナーは還さないといけない、自分が還すんだ」。そう思いながら、打席に立った倉本は初球から積極的にスイング。しかし2球連続でファウルで追い込まれてしまう。

 そこから粘って6球目。外寄りの変化球をレフトまで運んで犠牲フライ。福田秀平(34・元ロッテ)と共に、打線を牽引するベテランのバットが先制点を呼び込んだ。

「(最初の2球で)仕留めたかったんですが、追い込まれたので切り替えました。『最低限の仕事を』と考えての犠牲フライ。そこはよかったと思います」

 これがNPB球団を相手にあげたチーム初打点。そう伝えると「気にしていなかったです」と照れ臭そうに笑顔を見せた後、こう続けた。

「本当にゼロからのスタートで、ひとりひとりが『初めまして』のところから始まった。キャンプ、試合と野球の中でお互いを知っていって、試合の中でのチームワークだったりができてきていると思うので、これから本当に一つひとつを積み重ねていきたいなと思います」
 
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