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プロ野球

かつての「サイ・ヤング賞」候補、ムーアが若鷹軍団へ! メジャーファンが色めき立つ理由とは?

2019.12.27

元球界最高のプロスペクトが来日! 全盛期の姿は復活なるか。(C)Getty Images

元球界最高のプロスペクトが来日! 全盛期の姿は復活なるか。(C)Getty Images

 1日遅れたクリスマス・プレゼントだろうか。26日、ソフトバンクは来季の新外国人としてメジャー通算54勝の左腕マット・ムーアの獲得を発表した。

 タイガースに在籍した今季はわずか2登板、2015年以降の防御率も5点台と、お世辞にも好投手と呼べる成績ではないのだが、日本のメジャーリーグファンが色めき立っているのには理由がある。

 多くの媒体でも報じられているように、ムーアは「超トップ・プロスペクト」だった。08年ドラフト8巡目でレイズから指名されると、快速球とスライダーを武器にすぐに頭角を現し、11年9月にメジャー初昇格。その年のプレーオフ、新人ながら地区シリーズ第1戦の先発を任されたムーアは、敵地レンジャーズ戦で7回無失点と圧巻のピッチングを見せ、一気に知名度を上げた。そして12年の開幕前にMLB.comが発表した有望株ランキングでは、あのブライス・ハーパー(現フィリーズ)とマイク・トラウト(エンジェルス)を抑えて堂々の全体1位にランクイン。「将来サイ・ヤング賞は確実」との声すらあった。

 フルシーズンを迎えた12年は11勝、防御率3.81とまずまずの成績を残すと、翌13年は前半戦だけで13勝を挙げてオールスターに出場。最終的にリーグ3位の17勝と、才能の一端を示してみせた。しかし、14年に開幕早々にヒジを痛め、トミー・ジョン手術を受けることになってしまう。文字通り、彼の「ターニング・ポイント」はこの時だった。
 
 かつて平均95マイル(約153km)を記録した速球は、術後は92マイル(148km)程度まで下落。メジャーの打者をバッタバッタと切れ伏せた剛速球は見る影もなく、上述した通り、成績も大きく悪化し、サイ・ヤング賞どころかメジャーのローテーション投手でいることもできなくなってしまった。
 
「メジャー54勝」「オールスター出場」「シーズン17勝」。この文字面を見て沸き上がる高揚感は、もしかしたら裏切られてしまうかもしれない。しかし、メジャーファンは知っている。ムーアがかつて球界の期待を一手に受け取っていたことを。そして同時に、その姿がないことも知っている。それでもなお、彼がデビュー当時に見せた輝きは、今も心の中に残っている。

 確かに全盛期のスピードボールは見られないかもしれないが、“晩年”の平均球速も、日本球界の左腕では今永昇太(DeNA)に匹敵する数字。日本という新たな国で、ムーアがもう一花咲かせてくれたら……。

 ちなみに、このオフにオリックスに加入した球宴5度のアダム・ジョーンズとは、レイズ時代に同地区で何度も戦った仲。ムーアがメジャーで最も対戦したのがジョーンズで、通算36打席で打率.353、3本塁打、OPS1.036とかなりやられている。来季“同じ”リーグで鎬を削る、メジャーで実積を残した2人のマッチアップにも注目したい。

文●新井裕貴(SLUGGER編集部)
 
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