MLB

「彼ほど野球の歴史に興味を抱いている選手は珍しい」アメリカ野球殿堂館長が語る「イチローがクーパーズタウンを愛する理由」<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2024.04.26

ついに来年の殿堂入り間近のイチロー氏。現役時代から足繁くクーパーズタウンに足を運んでいる。(C)Getty Images

 来年7月、ニューヨーク州クーパーズタウンのアメリカ野球殿堂で、日米の野球交流史に焦点を当てた企画展『野球とベースボール:太平洋を越えた日米の野球交流』が開催される。

【関連記事】「ノモの活躍がアメリカの日本野球観を間違いなく変えた」――アメリカ野球殿堂館長が語る日米野球交流展への抱負【前編】<SLUGGER>

 今回の展示は、ある日本人選手が近く到達するであろう新たな金字塔にタイミングを合わせた企画と言っても決して過言ではない。

 そう、イチローの日本人選手初となる殿堂入りだ。今年でちょうど引退から5年が経ち、殿堂入り資格を得る稀代の安打製造機は、最初の投票での「一発合格」が確実視されている。その場合、ちょうど来年の7月に行われる殿堂入りセレモニーにも出席するはずだ。

 イチローが現役時代からクーパーズタウンの殿堂を何度も訪れていることはよく知られている。なぜ彼はここまで"聖地"に魅せられているのだろうか?

 アメリカ野球殿堂館長を務め、イチローとも交流のあるジョシュ・ラウィッチ氏は次のように語る。

「彼がまず言っていたのは、クーパーズタウンに行くこと自体が特別であるということです。時間と労力を費やさなければいけない場所なんですね(注:マンハッタンから車で4~5時間)。そうしてクーパーズタウンに来てみると、子供の時に感じていた野球の愛が蘇るというんです。ビジネス的な部分から離れて、純粋に野球を愛していた時の気持ちが戻ってくるんです」

 もう一つは言うまでもなく、野球/ベースボールの歴史を紡いできた先人たちへの深い敬意だ。
 
「往年の選手、たとえば彼が年間安打記録を破ったジョージ・シスラーのバットを持った時などに、その人の存在を実際に感じることができるのだと言っていました。イチローがクーパーズタウンについ話す姿を見ているだけで、彼にとってどれだけ特別な意味を持った場所なのかが分かります」

 クーパーズタウンだけではない。イチローはカンザスシティにあるニグロリーグ博物館にも何度も足を運び、多額の寄付をしたことでも知られる。09年には、セントルイス郊外に眠っているシスラーの墓を訪ねたこともあった。

「イチローほど野球の歴史に興味を抱いている選手は本当に珍しいと思います。興味深いのは、彼自身が殿堂入り級の選手として、さまざまな記録を打ち破ってきたことです。彼はアメリカの歴史についてもよく勉強しています。ニグロリーグの重要性を深く理解しているからこそ、あれだけの寄付をしたのでしょう。そうしたことすべてがイチローの人間性はもちろん、彼の野球への深い愛情や先人たちへの敬意をも示しているのです」

 来年7月、イチローの殿堂入り式典を見るために、多くの日本人ファンがクーパーズタウンを訪れるだろう。彼が"聖地"をなぜそこまで愛するのか、実際に足を運んでみるとよく理解できるはずだ。

構成●SLUGGER編集部

【関連記事】「日本のファンの野球への情熱をアメリカ人に知ってほしい」――アメリカ野球殿堂館長が語る日米野球交流展への抱負【後編】<SLUGGER>

【関連記事】残るは4球団のみ!9月の古巣エンジェルス戦での達成可能性も…大谷翔平、今季中の「MLB全30球団ホームラン制覇」への道<SLUGGER>
 
NEXT
PAGE
【動画】まさにレジェンド!イチローのメジャー19年間を振り返るハイライト映像