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「今永はいつオプトアウトできるんだ?」カブスと争奪戦を繰り広げたレッドソックス記者も認めた“投げる哲学者”の実力<SLUGGER>

ナガオ勝司

2024.04.28

5登板を終えて4勝0敗、防御率0.98。今永は文字通り最高のスタートを切った。(C)Getty Images

 現存するメジャーリーグ最古の球場を訪れたカブスの今永昇太は、4月26日(現地)のレッドソックス戦の登板直前、相手の練習中にひょっこり姿を表し、その歪な外野フェンスを見渡したという。

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「ライトのフェンスは低い。レフト(グリーンモンスター)はそこまで深くない」

 ひと目見て分かるその独特の形状はしかし、レフトにフライが上がれば本来は平凡なアウトのはずがフェンス直撃の二塁打、あるいは本塁打になることを教え、ライトのポール際なら「そんなの入る?」という本塁打、手前で打球がバウンドすれば大きく弾んでスタンドに飛び込むグラウンドルール・ダブルになる警鐘を、今永の心に鳴らしていた。

 それから数時間後、レッドソックス打線が今永から放った外野への打球は、多かった順にライトフライが3球、センターフライが2球、ライト前ヒットが1球、センター前ヒットが1球、そして、センターへのソロ本塁打の計8球だった。

「よりによって一番深いところに入れられたんで、すごく悔しかった」とは、試合後の今永の弁だ。

 他の選手たちがことごとく空振りやファウルにしていた伸びのある高めの速球を、タイラー・オニールはいとも簡単に弾き返した。脳震とうでしばらく試合に出られなかったにもかかわらず、マイク・トラウト(エンジェルス)の10本塁打に次いでアメリカン・リーグ2位タイの8号ソロ本塁打だ。大谷翔平(ドジャース)が座っていることでも分かるように、「チーム最強打者」が任される「2番」の打順に入っているだけのことはある。

「僕の感覚では、インハイよりもアウトハイの方が抑えられるんじゃないかと思ったが、そこを上回られたので、自分の100%が通用しない瞬間っていうものをあそこで感じた」
 
 今永に「メジャーの洗礼」を浴びせたオニールは試合後、次のように語っている。

「僕にはブレイキング・ボール(スライダーやカーブなど曲がる系の変化球)は投げてこなかったけど、いい真っすぐを持っているし、スプリットもいいことは分かっていた」

 打ってやったぜ、という響きがあるにもかかわらず、ニコリともしなかったのは、それがこの試合におけるレッドソックス唯一の得点だったからだろう。

 オニールのソロ本塁打は4回1死からで、レッドソックス打線はそれまで打者10人が完璧に抑え込まれていた。彼らが本塁打以外手も足も出ないような状態だった要因の一つは、今永の制球力にあった。

 1巡目で、今永は対戦9人中6人から初球ストライクを奪った。それにより、初見にもかかわらず高めの速球かスプリッターを積極的に狙うなど、いかにもしっかり対策してきた感のあったレッドソックス打線をさらに「早打ち」にさせた。

 ホームランを打たれた直後、今永は「打たれた後にどうするかというマインドの切り替えが大事」と、投手の教科書のような気持ちの切り替えを確実に行った。

 直後のロブ・スナイダーにフルカウントまで粘られて四球を与え、続くラファエル・デバースにもライト前ヒットを許したものの、そこから2人を凡退させて最少失点で切り抜けた。そして、このイニングに対戦した打者6人すべて、初球はストライクである。

「四球を1つ出したんですけど、あとはストライクゾーンでしっかり勝負ができたのが、球数を少なくできた理由だと思う」

 今永は「ピンチの時は捕手の配球を優先するようにしている」と言う。

「その理由としては、ピンチの時は(自分が)客観的に見られていないからで、捕手は冷静で打者との距離も近いですし、空気感も感じ取っているので、ピンチの時こそ捕手の意見を大事にしています」