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プロ野球

【ブレイクスルーの舞台裏】原監督が「一番強い打者に」ぶつけたサウスポー。中川皓太を奮い立たせた菅野の言葉とは【密着女子アナが見た巨人】

真鍋杏奈

2019.12.29

チーム最多の67試合に登板。セットアッパーとしてその立場を確立した。写真:THE DIGEST編集部

チーム最多の67試合に登板。セットアッパーとしてその立場を確立した。写真:THE DIGEST編集部

 今季、飛躍を遂げた選手の一人が、左腕の中川皓太投手です。

 チーム最多の67試合に登板し、4勝3敗、17ホールド、16セーブ、防御率2.37という安定した成績を残して、チームの5年ぶりのリーグ優勝に貢献。開幕2戦目3月30日広島戦の今季初登板から16試合17イニング連続無失点を記録し、セットアッパーやクローザーなど勝利の方程式を担ってブルペンを大きく支えました。

 今季の巨人は、中継ぎの登板が流動的でなかなかポジションが確立されない中、原監督は唯一「1番強いバッターに中川」と厚い信頼を寄せていました。中川投手にシーズン序盤の頃に話を聞くと、こう話してくれました。

「勝ちパターンの場面で任されるのが初めてで嬉しいです。自信になります!昨季までは抑えようという気持ちが出すぎてて空回っていたけど、今年は少し気持ちに余裕を持てているんです」

 その自信は雰囲気にも表れていて、昨季より堂々としていて顔も凛々しく変わったように思えました。
 
 去年夏頃から腕を少し下げてサイドスロー気味に投げるフォームに変更し、「最初は遊びで投げていたら、見ていた阿部(慎之助)さんに勧められて変えてみました。それが自分でも違和感なく、しっくりきていた。ボールの出てくる角度がバッターが打ちづらそうにしている」と手応えを感じたそうです。そうした自信はどんどん結果にも表われていきました。

 いつも物腰柔らかい話し方で穏やかな中川投手ですが、今季とても印象深い試合があります。

 8月8日の中日戦、菅野智之投手が先発した日でした。菅野投手は身体の不調などで約1ヶ月白星が付いていない中、この日は7回1失点と好投し、バトンを中川投手へ渡しました。

 ところが、中川投手が打たれてしまい、同点になり菅野投手の勝ちの権利が消えました。
 ベンチに戻った中川投手は悔しさから涙を流し、タオルで顔を隠しました。

 責任感の強さが前面に出ていた瞬間でしたが、その後テレビに映ったのは、菅野投手が笑顔で中川投手と話している姿でした。

 私は次の日、中川投手に何を話していたか尋ねました。

「落ち込むことないよ」と優しく声を掛けてくれて、さらに「自分だったらあの場面はこう攻めるよ」とアドバイスをもらっていたそうです。

 この言葉で気持ちが落ち着いて、また頑張ろうと切り替えられたと明るい表情で話していました。

 菅野投手とは今オフもハワイで一緒に自主トレーニングを行う予定ですが、野球の技術面だけでなく、食事の面や普段の生活面も全て勉強になるといいます。

「結果で菅野さんに恩返しをしたい」

 2人の優しい人柄と互いを想い合う絆を強く感じました。

 今秋はプレミア12で初めて日本代表メンバーに選出され世界一にも貢献し、多くの経験を経て躍進し続ける中川投手の存在は、来季8年ぶりの日本一を目指すチームにとって、欠かすことが出来ません。

「強いバッターと対戦するのが楽しみ」

 そう笑って話す姿は野球少年のようなエースリリーフ。
 さらなる自信を手にした中川投手から来季も目が離せません。

取材・文●真鍋杏奈(フリーアナウンサー)

【著者プロフィール】
 ホリプロ所属。ラジオ日本「ジャイアンツナイター」。ベンチリポーターやスポーツニュースを担当。スポーツ全般を取材。プロ野球、社会人野球、高校野球の番組を務める。趣味はスポーツ観戦。ゴルフ。2020年1月22日(水)には「東京タワーで球春到来」(東京タワー大展望台にて)で公開収録のMCを務める。コメンテーターは中畑清氏 ゲストに中川皓太投手、高橋優貴投手。
 

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