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ロン毛バッサリ、覚悟を感じる発言の数々… 防御率1.47、西武・今井達也に漂う“エースの矜持”

氏原英明

2024.05.17

今季好調をキープする今井。防御率1点台と抜群の安定感を誇る。写真:産経新聞社

今季好調をキープする今井。防御率1点台と抜群の安定感を誇る。写真:産経新聞社

 2017、18年シーズン、西武ライオンズのエースとして君臨した菊池雄星選手(ブルージェイズ)と「エースとは何か」の論議を重ねたことがある。

 2016年オフに尊敬する岸孝之が楽天へ移籍して、その座を譲り受ける形になった菊池は「エースになるために必要なこと」を自分の中でモノにしようとしていたのだ。その最初の頃に重要ポイントとして語ったのが「勝負どころ」だった。試合に勝っても負けても、登板のたびに、「今日の勝負所」を語り合った。そうしていくうち、彼なりの「エース論」みたいなものが次第に出来上がっていた。

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 西武の開幕投手・今井達也が新エースに名乗りをあげる圧巻の投球を見せている。勝利は5月12日の楽天戦で3試合ぶりの勝利を挙げて3勝に到達したばかりだが、防御率は1.47と支配的なピッチングを続けている。日程の関係で、日にちはズレてきたものの、ほとんどの試合でカード頭を任され、投手陣を引っ張っている。

 ストレートの最速は159キロを計測。過去には160キロを出しているから「結果的に出ればいいけど、こだわっていない」。むしろ、打者たちを圧倒しているのはチームメイトの平良海馬も手本にしているスライダーだ。決め球は斜めに変化するが、右打者、左打者、空振りを取りたい時、カウントを取りたい時と、用途によって使い分けることができる優れた球である。

 12日の楽天戦ではほとんどストレートとスライダーで抑え切ったが、「本来の自分のピッチングのスタイルは真っ直ぐとスライダーがあって、シンカー系のボールの三つ。バランスよく投げることを今日の試合で改めて実感できた」と課題を語ったあたり、まだ、この右腕は手の内を完全に見せているようではない。末恐ろしいピッチャーと言えるだろう。

 当然、そのボールの一つひとつは質が高く、惚れ惚れするのだが、これまで好調の今井に感じるのはチームを背負う覚悟だ。トレードマークのひとつだったロン毛をバッサリ切り落とし「チームの流れを変えたかった」という頼もしい発言はファンの心を打った。試合後の囲み取材では矢継ぎ早の質問にも顔色ひと変えずに丁寧に答える姿勢は”スーパースター”の領域でメディアの評判もすこぶるいい。

 地位が人を作るともいうが、エースという立場に君臨するにあたって、技術だけではなく人として律しているような印象だ。チームのために腕を振り続ける姿勢には取材者としても感心するばかりだ
 
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