プロ野球

【ドライチたちの現在地】右のエースに成長した上茶谷大河。「新球種」を武器に新シーズンはふた桁勝利を目指す

萩原孝弘

2020.01.13

「体力的にしんどい時期もあった」が1年間を通して投げられたことを球団に評価されたという。写真:萩原孝弘

 東洋大から2018年ドラフト1位でDeNAに入団した上茶谷大河。開幕ローテーションを掴み取ると、4月2日先発としての初マウンドに登り7回1失点と圧巻デビュー。その後は好投しながらも勝ち星の付かない状況に陥るも、5月18日に初勝利を上げると、8月6日に敗戦を喫するまで、球団新人史上初の6連勝もマークした。

 シーズン序盤に一度の抹消はあったものの、先発ローテーションをほぼ守り抜き、投球回数134は今季大活躍した左腕エース・今永昇太に次いでチーム2位。7勝6敗、防御率3.96の成績でCSでの登板も経験するなど、右のエースと言っても過言ではない活躍を見せ、即戦力として機能した。

 入寮の際に目標としていた「新人王」こそ逃したが「ケガ無く一年間戦い抜く」ことはクリアできた。球団からも「先発としてイニングを稼ぎ、1年通して投げられたこと」を評価されたと本人が契約更改後に明かしていた。大卒ドラフト1位の期待通りの働きをしたと言っていいだろう。
 
「1年間通して、最初の期間や夏の勝てない時期などいろいろ経験させて頂きました。夏にバテがきたり、体力的にしんどい時期もあった」上茶谷自身、初のプロでの1年を過ごせたことで課題も見えた。

「来年以降につながる1年間。先発として自分の力を1試合の中で出しきった上で長いイニングを投げる」とフィジカル面の強化のために「1月から(山崎)康晃さんのキャンプに参加させていただき、長年怪我なくやっている方のトレーニング方法や、オフの過ごし方を学ぶ」ことも明かした。

 これは山崎が企画する、球界のみならずゴルフや陸上など各スポーツ界のアスリートとともに、温暖な土地で行うキャンプ。上茶谷にとって初のプロのオフに、いい経験が積めそうだ。

 そもそもカットボール、スライダー、スプリット、チェンジアップなど多彩な変化球を駆使する器用なピッチャーだが、新シーズンに向けさらに球種を増やすことも示唆。チームメイトのある左腕の握りを参考にし「握りの浅い落ちる球」を習得することで、投球の幅を広げるつもりだ。高校から記し続けているノートを参考に、その日の調子によって微妙にフォームを変えるなど、ピッチャーとして独特な調整法を実践している器用さを持ち合わせるだけに、大きな新しい武器としての期待が持てる。

「今年の134イニングをまず超え、ふた桁勝利して今年よりもいい成績を残す」ことを目標に掲げた上茶谷。名球会入りも果たした偉大なOB平松政次氏の背番号27を背負う右腕は、2年目のジンクスを吹き飛ばすべく新シーズンへ邁進する。

取材・文・写真●萩原孝弘(ライター兼カメラマン)

【著者プロフィール】
はぎわらたかひろ。1971年、横浜生まれ横浜育ち。フリーとして野球はDeNAを担当。プロレス、格闘技とともに芸能も手掛ける。