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菊池雄星に必要以上の対価を支払ったアストロズ、またも無為無策の夏を過ごしたエンジェルス...トレード・デッドラインの「負け組」たち<SLUGGER>

藤原彬

2024.08.02

菊池雄星獲得のために3人の有望株を差し出したアストロズは現地メディアから「デッドラインの負け組」に数えられている。(C)Getty Images

 今年も数多くの選手がめまぐるしく動いたトレード・デッドライン。ドジャース、カーディナルス、オリオールズなどが着実に戦力を向上させた一方、当初の想定を下回る成果しか得られなかったチームもある。中でも、今年のトレード・デッドラインの「負け組」とされているのが、以下に紹介する3チームだ。

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▼ホワイトソックス
 MLB歴代ワーストのシーズン120敗を越える勢いで負け続けているチームにとって、今夏のトレード市場は再建への先鞭をつけるためのチャンスでもあった。

 特に、若き奪三振王のギャレット・クローシェイ、昨季38本塁打を放ったルイス・ロバートJr.を放出して数多くのトップ・プロスペクトを獲得したいところだったが、クローシェイが移籍先との長期契約を要求。希望が叶えられなければポストシーズンを欠場とするとの噂が流れたことから、ドジャースなどが獲得に難色を示し、結局トレードをまとめられなかった。

 さらに、エリック・フェッディ、マイケル・コーペック、トミー・ファムを放出した三角トレードで得たのはミゲル・バルガスと中レベルのプロスペクト2人だけで「見返りがあまりにも少ない」と批判が殺到。「将来を形作るためにもっと多くのことができた」(FOXスポーツ)と指摘されたのも無理はない。クローシェイ、ロバートJr.は今オフにも引き続きトレード話が再燃しそうだが、すでに最高の売り時を逃した可能性も否定できない。

▼エンジェルス
 ここ数年のフロントの迷走を踏襲するかのように、無目的とも思えるトレード期間を過ごした。大谷翔平がドジャースへ去った今季は主砲マイク・トラウトの故障離脱が重なって低迷していたが、オールスター前からにわかに勝ちが続き、再建を嫌う球団はトレード期限数日前まで補強を考えていたとも報じられている。
 クローザーのカルロス・エステベスをフィリーズに放出してまずまずの有望株を得たのは良しとしても、同じくトレードが噂されていた先発左腕のタイラー・アンダーソン、便利屋ルイス・レンヒーフォ、外野手のタイラー・ウォードは放出せず。明らかに売り手有利だった今夏の市場でも有利な取引をまとめられず、MLBワースト級のファーム組織を好転させるチャンスをまたもみすみす逃した。

 ESPNのブラッドフォード・ドゥーリトルが記した「エンジェルスについては毎度、真剣にリセットする必要があると書いている」は多くのファンや関係者も共有する思いだろう。

▼アストロズ
 シーズン序盤でつまずきながら盛り返し、オールスター直後にア・リーグ西地区首位に立った。ダナ・ブラウンGMは故障者が続出している先発投手陣の底上げを以前から明言し、その言葉通り、ブルージェイズから菊池雄星を獲得した。

 そこまではまだ良かったが、直近8先発で0勝4敗、防御率7.75と大きく調子を落とし、しかも今オフにFAとなる菊池に対して3人の若手選手を放出。これが明らかに割に合わないと当のアストロズファンからも批判を浴びており、「騙された」「対価が大きすぎる」「冗談でしょ?」など否定的な声が相次いでいる。

 確かに、同じレンタル物件で菊池よりはるかに好成績を残しているジャック・フラハティ(タイガース→ドジャース)と比べると、あまりにも気前良くプロスペクトを放出してしまった感は否めない。もう一つの補強ポイントだった一塁も手つかずのままで、いまひとつ物足りなさが残ってしまった。

文●藤原彬

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。X(旧ツイッター)IDは@Struggler_AKIRA。

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