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【最新版ドラフト候補ランキング解説】“大学生ビッグ5”に加えて報徳学園・今朝丸ら高校生投手の評価が急上昇<SLUGGER>

西尾典文

2024.08.06

センバツでも躍動した今朝丸。今夏の甲子園でも好投してさらに評価を高めたい。写真:THE DIGEST写真部

 3月の侍ジャパントップチームの強化試合に招集された金丸夢斗(関西大)、中村優斗(愛知工業大)、宗山塁(明治大)、西川史礁(青山学院大)と、昨年から大学日本代表でも活躍している渡部聖弥(大阪商業大)を加えた大学生5人が中心と見られる2024年のドラフト。春は宗山が怪我で欠場が続き、金丸もリーグ戦終盤に故障で離脱して大学日本代表は辞退となったが、それでも高い評価は変わらないという印象だ。

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 中でも、安定感と実績から今回は金丸を1位評価とした。これだけ完成度の高い左投手は過去を振り返ってもなかなかおらず、今年新人王争いを演じている武内夏暉(西武)と比べても、金丸の方が総合力で上回っているように見える。即戦力投手が欲しい球団は多いだけに、一番人気となる可能性は高いだろう。

 年初の時点ではこの5人以外にも大学生に有力候補が多いと見られていたが、春から夏にかけて高校生が一気に評価を上げてきた印象を受ける。投手では今朝丸裕喜(報徳学園)が筆頭格だったが、夏の地方大会で藤田琉生(東海大相模)、柴田獅子(福岡大大濠)が大きく評価を上げてきた。

 今朝丸は春のセンバツで1年前とは別人のような投球を披露。春の県大会は疲れも考慮して登板を回避したが、夏にしっかりと調子を上げてきた。将来性と完成度を高いレベルで兼ね備えているのが魅力だ。藤田は198㎝、柴田は190㎝とこちらの2人も大型だが、フォームに悪い癖がないのが大きな特長。特に藤田は変化球のレベルも高く、激戦の神奈川を勝ち抜いた。柴田は惜しくも福岡大会の決勝で敗れ、安定感は少し劣るものの、好調時の投球の迫力は今朝丸、藤田を上回るものがある。3人とも1位指名の可能性は十分だ。
 高校生野手では石塚裕惺(花咲徳栄)に加えて森井翔太郎(桐朋)、斎藤大翔(金沢)の2人が上位にランクイン。石塚はU-18侍ジャパン強化合宿で見せた木製バットでの打撃が強烈で、夏もしっかり成績を残したのはさすがだ。森井は夏も初戦で敗れるなど実績は乏しいものの、ポテンシャルの高さは抜群で、投手としても150キロを超える強肩も光る。斎藤はショートの高い守備力に加えてスピードとパンチ力も備えており、右打者という点もポイントが高い。将来性の高い野手を優先する球団は、この3人をまず狙うことになるだろう。

 有力候補が少ないとみられていた社会人だが、今年に入って吉田聖弥(西濃運輸)が大きく評価を上げてきた。バランスの良いフォームは美しいと形容したくなるほどで、制球力の高さも光る。レベルの高い社会人で都市対抗予選、本選と先発で結果を残し続けた安定感は見事だ。高卒4年目と年齢的にもまだ若く、それでいながら完成度も高いだけに、金丸を逃した球団が高い順位で狙うことも考えられるだろう。同じサウスポーでは伊原陵人(NTT西日本)、野手ではともに捕手の野口泰司(NTT東日本)、石伊雄太(日本生命)も大学卒2年目でしっかり結果を残しており、評価を上げている印象だ。

 高校生の投手が一気に手厚くなった印象で、上位を狙えるポテンシャルの選手は少なくない。一方で野手はそれほど有力候補が多くなく、特に打てる選手は貴重に見える。それだけに大学生、社会人で打撃に特長のある選手が、残りの試合で評価を上げてくることも十分に考えられるだろう。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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