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MLB

ピート・ローズの“復権”はコミッショナーのトランプ大統領への忖度? 依然として厳しい殿堂入りへの道<SLUGGER>

出野哲也

2025.05.19

ついに“復権”を果たしたローズ。今も一部に熱狂的な支持者はいるが、殿堂入りへの道はまだ遠い。(C)Getty Images

ついに“復権”を果たしたローズ。今も一部に熱狂的な支持者はいるが、殿堂入りへの道はまだ遠い。(C)Getty Images

 5月13日、MLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーは、永久追放処分の対象者が死去した場合、その処分は解除することになると発表した。これまで追放された17名は全員故人となっているので、晴れて復権と相成った。

 悪名高い八百長事件“ブラックソックス・スキャンダル”で追放された8人や、レッズの監督時代に自軍の勝敗を賭博の対象にして処分されたピート・ローズもその中に含まれる。1989年に追放されて以降、何度も復権を求めながらついに叶わぬまま、ローズは昨年9月30日に死去していた。

 これによりローズ、そして“シューレス”ジョー・ジャクソンの野球殿堂入りの道も開けた。ジャクソンは前述のブラックソックス事件の登場人物の一人。1919年のワールドシリーズでギャンブラーから金銭を受け取り、敗退行為に及んだとして、当時最高の打者の一人であったジャクソンはグラウンドから姿を消した。彼の悲劇的な人生は『エイトメン・アウト』『フィールド・オブ・ドリームス』といった映画の題材にもなっている。

 野球賭博への関与がこれほどの厳罰を科されるのは、プロ野球とは勝利を目指すことが大前提である、という原則を脅かすものだからだ。野球協約では、故意に負ける敗退行為を働いた選手や関係者はもちろん、自軍の勝敗に賭けるだけでも永久追放と規定している。

 そのような重罪を犯しながら復権を認めた理由として、マンフレッドは「故人となった人たちは、これ以上野球の尊厳に対する脅威とはならない」からだと説明している。一応筋は通ってはいるが、なぜこの時期に急に決めたのか? との疑問も生じる。
 これに関しては、ドナルド・トランプの大統領復帰と大いに関連がある。トランプは、以前からローズは殿堂入りに値すると主張しており、2月28日にもSNS上で「彼はギャンブルに関わるべきではなかったかもしれないが、自分のチームの勝利に賭けていたのだ」との理由で復権を求めていた。4月16日には、マンフレッドとこの件について話し合ってもいた。

 要するにマンフレッドは、大統領のご機嫌を取るために(もしくはトランプに攻撃されるのを避けるために)、歴代のコミッショナーが誰も認めなかった重要な決定を下したのだ。その性急さは、「時短」に人一倍ご執心な彼らしいと言えなくもない。

 この決定は、当然ながら賛否両論となっている。ローズの故郷であるシンシナティ、およびレッズ球団は諸手を挙げて歓迎。オーナーのボブ・カステリーニをはじめ、元チームメイトのジョニー・ベンチやバリー・ラーキン、フィリーズ時代の同僚マイク・シュミットらの殿堂メンバーも祝福した。前コミッショナーのバド・シーリグも「コミッショナーの決定に理解と敬意を払う」とコメントしている。
 
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