群馬県の特徴的な形を、地元の人間は「鶴」にたとえる。その鶴の左翼の付け根部分に当たる西部の都市が桐生市だ。人口10万人弱のこの地は、昔から「球都」を標榜するほど野球が盛んな都市だった。その桐生市に、日本最先端の科学的トレーニングができる施設が存在する。それが『球都桐生ラボ』だ。
廃校となった桐生南高跡地の建物を活用した施設の一角に、マウンドを模した土が盛られ、3つのホームベースと打席が置かれている。そして、ホームベースと打席の中間の位置に最新鋭機器『ラプソード3.0』が鎮座している。
『ラプソード3.0』は、投球の回転数や回転軸、球の伸びや変化量、打者のスウィングスピードや打球角度、打球速度などさまざまなデータが計測できる弾道測定分析機器だ。大谷翔平(ドジャース)がテクノロジーアンバサダーを務めていることでも知られ、NPBでも11球団が導入済み。高校・大学でも、それぞれ100校以上が活用している。
だが、『球都桐生ラボ』の山岸孝太郎コーチによれば「市民ラボという形で存在しているのは当施設が日本でも唯一ですね」。桐生市内に在住・在学・在勤する人なら、年度内3回までラプソードの測定が無料になるという(予算に限りがあるため、上限に達し次第終了となる)。
「1回の測定に10万円」という施設もある中で、これは極めて異例のサービスだ。しかも、科学的な知見の豊富なコーチが、計測される各指標を小中学生にも分かりやすく説明し、成長に必要な道筋をともに考えてくれる。これほど恵まれた環境は日本広しといえども滅多にないだろう。
「まずは楽しんで自分の数字を見てもらうことですね。普通の野球生活をしていたら、自分の回転数を知る機会はなかなかない。それが、ラプソードを使えばもっともっとたくさんの数字が出る。それをまずは楽しんでもらうことですね。『大谷選手も同じことをやってるんだよ』って言えますしね(笑)」(山岸コーチ)
昨年4月のオープンからまだ1年しか経っていないが、早くも成果は出ているという。市内の小中学生では、前回の測定から10キロも球速がアップした選手もいれば、推定飛距離120メートル級の一打を放った選手もいるという。また、同じ桐生南高跡地でトレーニングを行い、23年4月の創部以来毎年、日本代表選手を輩出している中学硬式野球団『桐生南ポニー』も、ラボも活用しながら選手を育成している。
ラプソードでは具体的な数値が如実に出るだけに、目標とするラインも立てやすい。また当分先の話だが、いずれはメジャーリーガーも輩出したいというのが『球都桐生ラボ』の掲げる大きな夢で、「桐生から世界へ羽ばたこう」というスローガンにもつながっている。
『桐生南ポニー』の選手たちも、「考えながらトレーニングすること」の重要性を如実に感じているようだ。
「リリースの位置やボールの回転数、回転軸が分かると、それを生かしてバッターをどうねじ伏せるかを考えるようになる。そうすると、対戦が面白くなるのがいい」
宮城大弥(オリックス)に憧れているというA君の語り口は、まさに新時代の野球選手の卵という感じだった。他の選手たちも頭を使いながら、楽しく目標に向かって進んでいる様子。『桐生ラボ』の協力を得て、いずれは彼らが世界へ羽ばたく時が来るかもしれない。
取材・文●筒居一孝(SLUGGER編集部)
【動画】桐生ラボでの『ラプソード3.0』測定の様子。打撃と投球を同時に計測できる
廃校となった桐生南高跡地の建物を活用した施設の一角に、マウンドを模した土が盛られ、3つのホームベースと打席が置かれている。そして、ホームベースと打席の中間の位置に最新鋭機器『ラプソード3.0』が鎮座している。
『ラプソード3.0』は、投球の回転数や回転軸、球の伸びや変化量、打者のスウィングスピードや打球角度、打球速度などさまざまなデータが計測できる弾道測定分析機器だ。大谷翔平(ドジャース)がテクノロジーアンバサダーを務めていることでも知られ、NPBでも11球団が導入済み。高校・大学でも、それぞれ100校以上が活用している。
だが、『球都桐生ラボ』の山岸孝太郎コーチによれば「市民ラボという形で存在しているのは当施設が日本でも唯一ですね」。桐生市内に在住・在学・在勤する人なら、年度内3回までラプソードの測定が無料になるという(予算に限りがあるため、上限に達し次第終了となる)。
「1回の測定に10万円」という施設もある中で、これは極めて異例のサービスだ。しかも、科学的な知見の豊富なコーチが、計測される各指標を小中学生にも分かりやすく説明し、成長に必要な道筋をともに考えてくれる。これほど恵まれた環境は日本広しといえども滅多にないだろう。
「まずは楽しんで自分の数字を見てもらうことですね。普通の野球生活をしていたら、自分の回転数を知る機会はなかなかない。それが、ラプソードを使えばもっともっとたくさんの数字が出る。それをまずは楽しんでもらうことですね。『大谷選手も同じことをやってるんだよ』って言えますしね(笑)」(山岸コーチ)
昨年4月のオープンからまだ1年しか経っていないが、早くも成果は出ているという。市内の小中学生では、前回の測定から10キロも球速がアップした選手もいれば、推定飛距離120メートル級の一打を放った選手もいるという。また、同じ桐生南高跡地でトレーニングを行い、23年4月の創部以来毎年、日本代表選手を輩出している中学硬式野球団『桐生南ポニー』も、ラボも活用しながら選手を育成している。
ラプソードでは具体的な数値が如実に出るだけに、目標とするラインも立てやすい。また当分先の話だが、いずれはメジャーリーガーも輩出したいというのが『球都桐生ラボ』の掲げる大きな夢で、「桐生から世界へ羽ばたこう」というスローガンにもつながっている。
『桐生南ポニー』の選手たちも、「考えながらトレーニングすること」の重要性を如実に感じているようだ。
「リリースの位置やボールの回転数、回転軸が分かると、それを生かしてバッターをどうねじ伏せるかを考えるようになる。そうすると、対戦が面白くなるのがいい」
宮城大弥(オリックス)に憧れているというA君の語り口は、まさに新時代の野球選手の卵という感じだった。他の選手たちも頭を使いながら、楽しく目標に向かって進んでいる様子。『桐生ラボ』の協力を得て、いずれは彼らが世界へ羽ばたく時が来るかもしれない。
取材・文●筒居一孝(SLUGGER編集部)
【動画】桐生ラボでの『ラプソード3.0』測定の様子。打撃と投球を同時に計測できる