5月12日の電撃トレードでソフトバンクから巨人へ移ったリチャードが苦しんでいる。突然のトレードによる加入後、初出場となった13日の広島戦でいきなり本塁打を放ち、幸先の良いスタートを切ったが、その後は失速。5月30日時点で打率.148と低迷している。
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リチャードの二軍での実績には文句のつけようがない。2020年に12本塁打を放って本塁打王を獲得すると、22年にはウエスタン新記録となる29ホーマー。その後もアーチを量産し、昨季まで5年連続でで本塁打王に輝いている。
二軍で5年連続本塁打王という実績は確かに立派だが、裏を返せばそれだけ一軍の壁に跳ね返され続けているということでもある。
ソフトバンクでは一軍で通算305打席に立ち、打率.160。OPS(出塁率+長打率)はわずか.529と、好成績を残し続けている二軍とはまったく別の顔を見せてしまっている。
このように結果が出ないのは、リチャードが二軍で見せていた打撃を1軍で再現できていないからだ。違いは一般的な成績だけでなく、打席内での振る舞いを表すデータにもはっきりと表れている。中でも注目したいのはボール球、それも大きく外れた、明らかに打つべきではない投球への反応だ。今回はこのような投球を「外れ球」と定義し、それに対するリチャードのスウィング率を見ていこう。
▼ソフトバンク時代の外れ球スウィング率(2020~25年)
一軍 外れ球スウィング 20.6%
二軍 外れ球スウィング 28.3%
二軍でのリチャードは外れ球のスウィング率が20.6%で、リーグ平均(20%前後)程度。リチャードといえば、何でもかんでも振り回すようなイメージがあるが、二軍ではある程度の見極めができていたようだ。
だが、一軍では姿が変わってしまう。二軍で20.6%だった値は一軍に上がると28.3%にまで悪化。二軍では打つべきでない球を我慢できていたにもかかわらず、一軍に上がった途端それができなくなっているのだ。ストライクゾーン内真ん中近辺の甘い球のスウィング率も71.6%から78.1%に上昇しているあたおり、少ないチャンスで結果を出そうと焦って何でも振ってしまう状態にあったのかもしれない。 ■平常心が導く一軍定着 移籍後のスウィング傾向から見えるリチャードの「変化」
ここ最近の低迷を見るに、移籍後もこの傾向は変わっていない――そう思っているファンも多いのではないだろうか。
しかし実は、外れ球への反応に限ればこれまでと大きな違いが見えてくる。ソフトバンク時代、外れ球のスウィング率が28.3%だったのが、巨人移籍後は23.6%まで改善。これまでスウィングしていた外れ球を我慢できている。投球の見極めという点においては、リチャードは二軍での打席内容を一軍でも再現しつつあるのだ。
▼移籍前後のスウィングデータ(2025年)
外れ球スウィング
ソフトバンク 28.3%
巨人 23.6%
甘い球スウィング
ソフトバンク 78.1%
巨人 82.8%
ボール球を振らなくなったのは、単にスウィングを控えているからではないか。そんな疑念を抱く人もいるかもしれない。だが、データはそれを明確に否定している。甘い球に対するリチャードのスウィング率を見ると、ソフトバンク時代は78.1%。一方、巨人移籍後は82.8%と上昇している。振るべき球には以前より積極的にバットを出しているのだ。投球を振るか見送るかの判断が一軍の舞台でも正しくできつつある。
もちろん、スウィング傾向が打撃のすべてではない。選球が的確でも、バットに当たらなければ安打にはならない。それでも、振るべき球を振り、そうでない球を見送ることは打撃の基本だ。リチャードは巨人移籍後、その“基本”をようやく一軍でも実行できつつある。ソフトバンク時代に比べて、結果を出さなければという焦りがいくぶん和らいでいるのかもしれない。現状は結果は出ていない。しかしこのまま平常心で打席に立ち続けることができれば、期待が持てるかもしれない。
※データは5月30日時点
文●DELTA
【著者プロフィール】
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』の運営、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。
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二軍で5年連続本塁打王という実績は確かに立派だが、裏を返せばそれだけ一軍の壁に跳ね返され続けているということでもある。
ソフトバンクでは一軍で通算305打席に立ち、打率.160。OPS(出塁率+長打率)はわずか.529と、好成績を残し続けている二軍とはまったく別の顔を見せてしまっている。
このように結果が出ないのは、リチャードが二軍で見せていた打撃を1軍で再現できていないからだ。違いは一般的な成績だけでなく、打席内での振る舞いを表すデータにもはっきりと表れている。中でも注目したいのはボール球、それも大きく外れた、明らかに打つべきではない投球への反応だ。今回はこのような投球を「外れ球」と定義し、それに対するリチャードのスウィング率を見ていこう。
▼ソフトバンク時代の外れ球スウィング率(2020~25年)
一軍 外れ球スウィング 20.6%
二軍 外れ球スウィング 28.3%
二軍でのリチャードは外れ球のスウィング率が20.6%で、リーグ平均(20%前後)程度。リチャードといえば、何でもかんでも振り回すようなイメージがあるが、二軍ではある程度の見極めができていたようだ。
だが、一軍では姿が変わってしまう。二軍で20.6%だった値は一軍に上がると28.3%にまで悪化。二軍では打つべきでない球を我慢できていたにもかかわらず、一軍に上がった途端それができなくなっているのだ。ストライクゾーン内真ん中近辺の甘い球のスウィング率も71.6%から78.1%に上昇しているあたおり、少ないチャンスで結果を出そうと焦って何でも振ってしまう状態にあったのかもしれない。 ■平常心が導く一軍定着 移籍後のスウィング傾向から見えるリチャードの「変化」
ここ最近の低迷を見るに、移籍後もこの傾向は変わっていない――そう思っているファンも多いのではないだろうか。
しかし実は、外れ球への反応に限ればこれまでと大きな違いが見えてくる。ソフトバンク時代、外れ球のスウィング率が28.3%だったのが、巨人移籍後は23.6%まで改善。これまでスウィングしていた外れ球を我慢できている。投球の見極めという点においては、リチャードは二軍での打席内容を一軍でも再現しつつあるのだ。
▼移籍前後のスウィングデータ(2025年)
外れ球スウィング
ソフトバンク 28.3%
巨人 23.6%
甘い球スウィング
ソフトバンク 78.1%
巨人 82.8%
ボール球を振らなくなったのは、単にスウィングを控えているからではないか。そんな疑念を抱く人もいるかもしれない。だが、データはそれを明確に否定している。甘い球に対するリチャードのスウィング率を見ると、ソフトバンク時代は78.1%。一方、巨人移籍後は82.8%と上昇している。振るべき球には以前より積極的にバットを出しているのだ。投球を振るか見送るかの判断が一軍の舞台でも正しくできつつある。
もちろん、スウィング傾向が打撃のすべてではない。選球が的確でも、バットに当たらなければ安打にはならない。それでも、振るべき球を振り、そうでない球を見送ることは打撃の基本だ。リチャードは巨人移籍後、その“基本”をようやく一軍でも実行できつつある。ソフトバンク時代に比べて、結果を出さなければという焦りがいくぶん和らいでいるのかもしれない。現状は結果は出ていない。しかしこのまま平常心で打席に立ち続けることができれば、期待が持てるかもしれない。
※データは5月30日時点
文●DELTA
【著者プロフィール】
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』の運営、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。
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