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胴上げ投手となった東北福祉大・桜井がアピールに成功! 青山学院大・中西も順調に成長【全日本大学野球選手権で評価を上げた投手たち】<SLUGGER>

西尾典文

2025.06.16

東北福祉大では堀越に注目が集まっていたが、この桜井の投球も素晴らしかった。写真:山手琢也

 東北福祉大の6大会ぶり4回目の優勝で幕を閉じた全日本大学野球選手権。ドラフト候補となる選手が多く出場したこともあって、連日NPBはもちろんMLBのスカウト陣も視察に訪れていたが、その前でアピールに成功した選手についてピックアップして紹介したいと思う。今回は投手編だ。

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 投手で最もアピールに成功したと見られるのが桜井頼之介(東北福祉大4年・聖カタリナ)だ。1回戦の九州産業大戦では7.2回を投げて2失点と試合を作ると、2回戦の東日本国際大戦ではリリーフで3回を被安打0、無失点と好投。準決勝の青山学院大戦こそ4回途中3失点(自責点2)で降板したが、翌日の福井工大との決勝では9回を一人で投げ抜いて1失点完投勝利を収め、見事胴上げ投手となった。

 投手としては小柄だが、フォームの躍動感が年々アップしており、ストレートはコンスタントに140キロ台後半をマークする。カットボール、スライダー、スプリット、カーブ、チェンジアップと多彩な変化球を操り、どのボールもレベルが高い。先発としてもリリーフとしても力を発揮できるのも大きな強みだ。この春の活躍で評価は確実に上がっており、上位はもちろん1位指名の可能性もありそうだ。

 桜井の活躍もあって登板機会は少なかったものの、チームメイトの堀越啓太(東北福祉大4年・花咲徳栄)も成長した姿を見せた。昨年までは主にリリーフを任されており、今年春のオープン戦とリーグ戦では先発では結果を残すことができずにいたが、今大会では2回戦の東日本国際大戦で先発を任せられると、6回を無失点、10奪三振と見事な投球でチームを勝利に導いた。

 ストレートは常時150キロを超え、視察したスカウトのスピードガンでは最速156キロをマーク。立ち上がりは少し力みもあって制球が不安定だったが、走者を背負っても球威が全く落ちることがなく、鋭く落ちるフォークと横に滑るカットボールは決め球として十分な威力がある。リリーフであれば即戦力として期待できる投手で、さらに先発としての可能性も見せたことで、改めて1位の12人に入る可能性が高いと感じさせられた。

 もう1人、1位指名の可能性が高くなりそうなのが中西聖輝(青山学院大4年・智弁和歌山)だ。準決勝の東北福祉大戦では4.1回を投げて6失点(自責点5)と打ち込まれたが、初戦の奈良学園大戦では7回を被安打1、四死球0、8奪三振で無失点とほぼ完璧なピッチングを見せた。

 昨年までと比べて明らかに出力が上がり、150キロを超えることも珍しくない。またカットボール、スプリットはストレートと同じ軌道から鋭く変化し、カーブ、チェンジアップで緩急をつけるのも上手い。投げる以外のプレーも高レベルで、大舞台での経験も豊富なだけに、早くから使える先発投手が欲しい球団からは人気となることは間違いないだろう。
 大会前にはあまり話題になっていなかったが、驚きの投球を見せたのが大矢琉晟(中京大4年・中京大中京)だ。これまでリーグ戦未勝利で、今年春のリーグ戦でも4試合、4.1回を投げただけだったが、エースの高木快大(中京大4年・栄徳)のコンディション不良もあって2回戦の近畿大戦で先発を任せられると、立ち上がりから150キロを超えるストレートを連発。最終的に7回を投げて被安打3、8奪三振、四死球0という見事な投球でチームを勝利に導いた。

 下級生の頃と比べて肘の位置が高くなり、ボールの角度が出てきたことでフォークも生きるようになった印象を受ける。球種が少ないのは気になったが、それでも近畿大の強力打線を抑え込んだのは見事という他ない。実績が乏しいだけに現時点での評価は難しいが、秋も今大会のような投球を見せることができれば、支配下でのドラフト指名も見えてくるだろう。

 他にも4年生、下級生ともに目立った投手は多かったが、下級生で1人紹介したのが磯部祐吉(中京大2年・享栄)だ。2回戦の近畿大戦では大矢の後を受けて登板して1.1回をパーフェクト、2奪三振の好リリーフを見せると、続く福井工大戦では負け投手になったものの7.1回を投げて2失点としっかり試合を作ってみせた。

 高校時代は東松快征(現オリックス)の控え投手で、当時のストレートは140キロ前後だったが、大学進学後に大きくスピードアップし、今大会では最速153キロをマーク。サイドスローでこれだけのスピードがあるのは貴重で、鋭く変化するスライダーも大きな武器だ。少し気が早いが、順調にいけば2027年ドラフトの有力候補となりそうだ。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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