アメリカ野球殿堂博物館があるクーパーズタウンはニューヨーク州北部、マンハッタンから車でおよそ4時間半~5時間の場所に位置する。大都会を抜けてハイウェイに乗り、牧場や湖、トウモロコシ畑、草原を通り過ぎながら山道を奥へ奥へと進んでいく。そうしてようやくクーパーズタウンに到着する頃には、都会の垢がすっかり抜け落ち、誰もが純粋なベースボールファンの姿を取り戻している――そんな気がしてならない。
【動画】日本人選手初の殿堂入り! イチローの好プレー集ハイライト
7月26日、2025年度の野球殿堂入り式典を前に、すでにクーパーズタウンに神々として祀られているレジェンドたちと、この度新たに迎えられたイチロー、CC・サバシア、ビリー・ワグナー、そして殿堂入りは果たしたもののすでに故人となったディック・アレン、デーブ・パーカーの家族によるパレードが行われた。
殿堂博物館の目の前の数百メートルを進むだけのささやかなパレードだが、そこに登場する面々はいずれもメジャーリーグの歴史に燦然とその名を刻む選手たちだ。“史上最強の捕手”ジョニー・ベンチ、史上最多2632試合連続出場を成し遂げたかル・リプケンJr.、通算303勝を挙げたランディ・ジョンソン、ヤンキースを5度の世界一に導いたデレク・ジーター、最強守護神マリアーノ・リベラ、サイ・ヤング賞3度、最優秀防御率5度のペドロ・マルティネス……総勢52人のレジェンドたちがオープンカーに乗り、笑顔を振りまきながら目の前を通り過ぎていく。メジャーリーグファンにとっては、それだけでも至福のひと時だ。
沿道で彼らに声援を送るファンのいで立ちを見ると、やはりマリナーズやヤンキースなど、今回殿堂入りした選手が活躍したチームのユニフォームを着ている人たちが多い。だがその一方で、メジャー全30球団のファンが集結しているのではと思えるほど多種多様なユニフォームが通りを彩っている。
つまり、「イチローの晴れ姿を見たいマリナーズファン」や「サバシアの晴れ姿を見たいヤンキースファン」だけでなく、ただ純粋に“ベースボールの聖地”に浸りたいというファンも数多くいた、ということだ。
彼らは、ベースボールの隆盛と発展に貢献し、多くのファンに夢を与えたレジェンドたちを祝福する。敵味方はもちろん、人種や国籍、肌の色は一切関係ない。パナマ出身のロッド・カルーやリベラにも、ドミニカ共和国出身のペドロにも、アフリカン・アメリカンのサバシアにも、白人選手たちと同じかそれ以上の声援が送られていた。それは、何とも表現のしようのない“多幸感”に満ちた空間だった。
最後に沸き上がった盛大な「イチロー!」コール(間違いなくこの日一番の盛り上がりだった)は、その集大成だった。実力があれば誰でも迎え入れ、その才能を称える――ドナルド・トランプ大統領の登場以降、ほとんど消え去ってしまったかのようにも思える「アメリカの最良の部分」が、クーパーズタウンにはまだ確かに残っていた。
文●久保田市郎(SLUGGER編集長)
【記事】【玉木正之のベースボール今昔物語:第15回】「それを作れば、彼らがやってくる」――アメリカ最高の野球映画『フィールド・オブ・ドリームス』の素晴らしさと“聖地”での思い出<SLUGGER>
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