終わってみれば、と6試合連続のクオリティ・スタート(QS)だ。7月30日のブルワーズ戦以来の勝ち星が転がり込んできたわけだが、もちろん、彼はこの試合で出た課題について考えていた。
「心拍数がガッと上がった状態で、3回までは良いピッチングだったけど、少し攻撃の時間が長くなって、同じ時間の感覚でマウンドに上がれなかったので、心拍数を上がるようなことを次からやってみてもいい」
考えること。それは「Pitching Philosopher=投げる哲学者」などと呼ばれる彼にとっては、息を吸ったり、吐いたりするのと同じようなことなのかもしれない。
「考えるのは好きっすよ。悩むのは好きなんで」
彼がそう言ったのは、件の登板の2日前のことである。
「米国に来て、考え方がいろいろ増えたんですけど、野球で悩むのって幸せなことだと思うんです。僕らは小さい頃から野球をやって来て、プロ野球選手になりたくて、メジャーに来れて、この環境を味わって、相手打者に打たれるとか何とかでちょっと落ち込んだりするかもしれないですけど、それって、大事な人の誕生日プレゼントを何にするのかで悩んでるようなもんじゃない? っていうね」
目標を達成した成功者の普遍的なコメントなのかと思いきや、「大事な人の誕生日プレゼント」と来た。その心は?
「大事な人の誕プレ、何にしよーかな? マフラーにしようかな? いや、マフラー持ってたなとか、悩むのが楽しいってのと同じなんです。野球も一緒。スプリット、全然、落ちないな、とか。自分でももちろん、いろいろ考えるんですけど、コーチに聞いて『こういう風に握って、こういう風に投げて』って言われて、『これでも出来ません』って答えると、じゃ、こうやってみれば? と言われて、はい、出来ました。あとはそれを試合でできるかどうかだけなんで。そういう悩み方。ショーケースみたいなもんなんです」
練習で身につけた技術を文字通り、試合で試す。彼は以前、それを「発表会で練習したことを発表するようなもの」と言ったことがある。発表会は楽しみなことであり、チームの調子がどうあれ、彼には関係ない。
「チームの状態がどうとかっていうのは、日本の時はメチャクチャ気にしてました。そもそも僕って、自分で自分のことをプレッシャーに強いとかメンタル強いとか思ってないんです。日本の時はどうしても、勝つ投球とか、流れを持ってくる投球とか、ちょっと目に見えないものを気にしすぎた部分がある。それはもちろん、日本のいいところではあるんですけど、目に見えない部分ってのは。それはそれで自分を苦しめていた」
念のため書いておくが、今永には日本球界や、日本独特の精神世界を否定するつもりはまったくない。彼はただ、自分が今、生きている世界に適応するために、米国流の考え方を自然な形で吸収したに過ぎない。
「日本の時と同じマインドだったら、もう何試合も炎上していた試合があると思う。たとえば2連敗できたら、3連敗はダメって考えるんじゃなくて、もう3連敗はないでしょ? チームの確率からしてみたいな、考え。日本の時は、連勝なんかしてたら連勝止めたらどうしようとか思ってたんですけど、こっちではチームが調子良いんだから、俺が打たれたところで、点取って勝つでしょ? みたいな。米国に来て思ったのは、点の取られ方とか…たとえば7回3失点、援護してもらった直後に2点を取られたとかは一旦、度外視して、とりあえず7回3失点だったと考えて、後はチームにお願いします、みたいな考え方をするようになった」
それで引っ掛かったのは、自分たちが常々、彼のことを「連敗ストッパー」と持ち上げて書いたり、今回のブレーブス戦のように、「味方が点を取ってくれた後に失点してしまった」と否定的に書いたりすることだった。記事になることを前提に、試合の流れや展開をドラマチックに書いてしまうのは、「我々、(日本)メディアの責任かもしれない」と正直に言うと、彼はニヤリと笑って「はい、そうです!」と言った。
「心拍数がガッと上がった状態で、3回までは良いピッチングだったけど、少し攻撃の時間が長くなって、同じ時間の感覚でマウンドに上がれなかったので、心拍数を上がるようなことを次からやってみてもいい」
考えること。それは「Pitching Philosopher=投げる哲学者」などと呼ばれる彼にとっては、息を吸ったり、吐いたりするのと同じようなことなのかもしれない。
「考えるのは好きっすよ。悩むのは好きなんで」
彼がそう言ったのは、件の登板の2日前のことである。
「米国に来て、考え方がいろいろ増えたんですけど、野球で悩むのって幸せなことだと思うんです。僕らは小さい頃から野球をやって来て、プロ野球選手になりたくて、メジャーに来れて、この環境を味わって、相手打者に打たれるとか何とかでちょっと落ち込んだりするかもしれないですけど、それって、大事な人の誕生日プレゼントを何にするのかで悩んでるようなもんじゃない? っていうね」
目標を達成した成功者の普遍的なコメントなのかと思いきや、「大事な人の誕生日プレゼント」と来た。その心は?
「大事な人の誕プレ、何にしよーかな? マフラーにしようかな? いや、マフラー持ってたなとか、悩むのが楽しいってのと同じなんです。野球も一緒。スプリット、全然、落ちないな、とか。自分でももちろん、いろいろ考えるんですけど、コーチに聞いて『こういう風に握って、こういう風に投げて』って言われて、『これでも出来ません』って答えると、じゃ、こうやってみれば? と言われて、はい、出来ました。あとはそれを試合でできるかどうかだけなんで。そういう悩み方。ショーケースみたいなもんなんです」
練習で身につけた技術を文字通り、試合で試す。彼は以前、それを「発表会で練習したことを発表するようなもの」と言ったことがある。発表会は楽しみなことであり、チームの調子がどうあれ、彼には関係ない。
「チームの状態がどうとかっていうのは、日本の時はメチャクチャ気にしてました。そもそも僕って、自分で自分のことをプレッシャーに強いとかメンタル強いとか思ってないんです。日本の時はどうしても、勝つ投球とか、流れを持ってくる投球とか、ちょっと目に見えないものを気にしすぎた部分がある。それはもちろん、日本のいいところではあるんですけど、目に見えない部分ってのは。それはそれで自分を苦しめていた」
念のため書いておくが、今永には日本球界や、日本独特の精神世界を否定するつもりはまったくない。彼はただ、自分が今、生きている世界に適応するために、米国流の考え方を自然な形で吸収したに過ぎない。
「日本の時と同じマインドだったら、もう何試合も炎上していた試合があると思う。たとえば2連敗できたら、3連敗はダメって考えるんじゃなくて、もう3連敗はないでしょ? チームの確率からしてみたいな、考え。日本の時は、連勝なんかしてたら連勝止めたらどうしようとか思ってたんですけど、こっちではチームが調子良いんだから、俺が打たれたところで、点取って勝つでしょ? みたいな。米国に来て思ったのは、点の取られ方とか…たとえば7回3失点、援護してもらった直後に2点を取られたとかは一旦、度外視して、とりあえず7回3失点だったと考えて、後はチームにお願いします、みたいな考え方をするようになった」
それで引っ掛かったのは、自分たちが常々、彼のことを「連敗ストッパー」と持ち上げて書いたり、今回のブレーブス戦のように、「味方が点を取ってくれた後に失点してしまった」と否定的に書いたりすることだった。記事になることを前提に、試合の流れや展開をドラマチックに書いてしまうのは、「我々、(日本)メディアの責任かもしれない」と正直に言うと、彼はニヤリと笑って「はい、そうです!」と言った。
関連記事
- 「マジで日本人キラーやん」大谷翔平、菅野智之から2打席連続HRの衝撃にネットあ然「巨人の英雄から連発は信じられない」「これ打たれたらお手上げ」
- 「マジで凄すぎ」大谷翔平が2打席連発の47、48号でキング猛追! LA重鎮記者は“4度目のMVP”に太鼓判「絶対確実だ」
- 「ここ数年ポストシーズンを逃してきた」カブス、勝ち進む条件は“スター外野手の復活”と米誌指摘「攻撃陣の起爆剤のような存在」
- 「一人一人が何をすれば良いのかを分かってるなと感じる」今永昇太も認める“貧乏軍団”ブルワーズ快進撃の秘密<SLUGGER>
- 「1ミリでも前進すること」――今永昇太と鈴木誠也が一つ一つ積み重ねる「伝統球団カブスの主力であることの証」<SLUGGER>




