ああ、すいません、と謝ると、彼はほくそ笑みながら、「あと、こう思ったんです。ちょっと脱線しますけど」と続けた。
「僕、『ハリー・ポッター』好きなんですけど、自分がチームを勝たせようとか、チームを背負うとかって、ハリーが......分かります? ハリーがヴォルデモート倒しに行くじゃないですか? その時に、橋のところで一人で行くみたいなこと、言い出すじゃないですか?」
そ、そうだったかな?
「言い出すんです。そしたら、ロンとか、ハーマイオニーが、『何言ってんだ?』と。なんであんた、勝手に一人でヒーローぶってんだ? みたいな」
詳しくは覚えていないが、いかにも主人公が言い出しそうなことだ。
「野球ってまさにそれだな、と思ったんですよ。俺が7回無失点でチームを勝たせるんだ、みたいなね。もちろん、ハリーっぽい気持ちって大事っすよ。大事なんですけど、いやいや、周りからしたら、『今まで皆で戦ってきて、俺たちもいるんだからさ』って。(ダンズビー・)スワンソンが『俺の守備があるんだから、俺に任せろよ』とか、ピート(・クロウ=アームストロング)が『俺の守備範囲広いんだから、どこに打たれても捕るよ』みたいな。そういうのでいいんじゃね? みたいな」
日本にいた頃、彼はハリー・ポッターが「俺が一人でヴォルデモートを倒すっ!」と意気込んむような気持ちでマウンドに上っていたという。
「メジャーだったらよく6回3失点って言いますけど、日本では6回3失点って言葉も、胸の中に置きたくないみたいな。俺は7回無失点で絶対、勝たなきゃいけない。次にバトンつないで、チームに流れを持ってこなきゃいけない。それを周りからも思われているし、自分も内側から絶対に思わなきゃいけないと思い込んでいた。でも調子が悪かったら、別に5回2失点でもいいし、5回4失点でも、5回投げ切れたからいいじゃん、っていうメンタルでもいいんじゃないかって」
「もちろん試合後、『5回4失点でも大丈夫です』って言うのは駄目です。でも、マインドって人には見えないじゃないですか? だから、心の内側では自分を許す気持ちを持っていてもいいんじゃない? っていうメンタルにはなりましたね」
とは言うものの、彼はまだどこかで「日本的であること」が抜け切れていないそうだ。
「一番困るのが、QSとかしてベンチに帰ってきたら、皆にこんなん(グータッチ)されるんですけど、サンキューって言っていいのか、堂々と『うん』と言っていいのか、えーっと、こういう時はどうすりゃいいの? みたいな気持ちになってしまう(笑)」
文●ナガオ勝司
【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
【記事】「95~96マイルならメジャーの打者にとっては打撃練習」――ピッチングニンジャが語る佐々木朗希“復活の条件”<SLUGGER>
【記事】「1ミリでも前進すること」――今永昇太と鈴木誠也が一つ一つ積み重ねる「伝統球団カブスの主力であることの証」<SLUGGER>
【記事】「ここ数年ポストシーズンを逃してきた」カブス、勝ち進む条件は“スター外野手の復活”と米誌指摘「攻撃陣の起爆剤のような存在」
「僕、『ハリー・ポッター』好きなんですけど、自分がチームを勝たせようとか、チームを背負うとかって、ハリーが......分かります? ハリーがヴォルデモート倒しに行くじゃないですか? その時に、橋のところで一人で行くみたいなこと、言い出すじゃないですか?」
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詳しくは覚えていないが、いかにも主人公が言い出しそうなことだ。
「野球ってまさにそれだな、と思ったんですよ。俺が7回無失点でチームを勝たせるんだ、みたいなね。もちろん、ハリーっぽい気持ちって大事っすよ。大事なんですけど、いやいや、周りからしたら、『今まで皆で戦ってきて、俺たちもいるんだからさ』って。(ダンズビー・)スワンソンが『俺の守備があるんだから、俺に任せろよ』とか、ピート(・クロウ=アームストロング)が『俺の守備範囲広いんだから、どこに打たれても捕るよ』みたいな。そういうのでいいんじゃね? みたいな」
日本にいた頃、彼はハリー・ポッターが「俺が一人でヴォルデモートを倒すっ!」と意気込んむような気持ちでマウンドに上っていたという。
「メジャーだったらよく6回3失点って言いますけど、日本では6回3失点って言葉も、胸の中に置きたくないみたいな。俺は7回無失点で絶対、勝たなきゃいけない。次にバトンつないで、チームに流れを持ってこなきゃいけない。それを周りからも思われているし、自分も内側から絶対に思わなきゃいけないと思い込んでいた。でも調子が悪かったら、別に5回2失点でもいいし、5回4失点でも、5回投げ切れたからいいじゃん、っていうメンタルでもいいんじゃないかって」
「もちろん試合後、『5回4失点でも大丈夫です』って言うのは駄目です。でも、マインドって人には見えないじゃないですか? だから、心の内側では自分を許す気持ちを持っていてもいいんじゃない? っていうメンタルにはなりましたね」
とは言うものの、彼はまだどこかで「日本的であること」が抜け切れていないそうだ。
「一番困るのが、QSとかしてベンチに帰ってきたら、皆にこんなん(グータッチ)されるんですけど、サンキューって言っていいのか、堂々と『うん』と言っていいのか、えーっと、こういう時はどうすりゃいいの? みたいな気持ちになってしまう(笑)」
文●ナガオ勝司
【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、
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