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プロ野球

オープン戦が本格的にスタート。先発再登板となる楽天・松井裕樹の今シーズンを占う鍵となるのは…?

氏原英明

2020.02.21

 この問いに対して、「問題ない」と言っていたのが、自身がクローザーから先発への華麗なる転身を遂げて、メジャーリーガーにも上り詰めた吉井理人(千葉ロッテコーチ)氏だ。

 吉井コーチは「完全に主観」と前置きしながら、日本ハムのコーチとして日本一に輝いた2016年頃、こんなことを語っていた。

「僕はむしろ先発から後ろに行くことの方が難しいと思っています。自分がクローザーから先発になった体験をしているので、そう感じるかもしれませんけど、要するに、強いストレートがあるかどうかですよ。それさえあれば、長いイニングは投げられるはず」

 当時の日本ハムがリリーバーから成功させたケースは、増井浩俊(オリックス)、高梨裕稔(ヤクルト)の2人が挙げられる。

 増井は8月から先発に転向すると8試合を投げ6勝1敗 2完投(1完封)防御率は1.39。高梨は6月にリリーバーから先発に配置転換され14試合で8勝0敗の好成績を残して、新人王に輝いている。

 その後、増井はクローザーへの思いが捨てきれずに直訴する形で、もとのポジションへと舞い戻ったが、2人は成功例に挙げられるだろう。もちろん、高梨はもともと先発タイプであったのがチーム事情でリリーフをやらされていたと言うのもあるが、日本一に貢献した二人の姿を見ていると「クローザー(リリーバー)からの先発転向の見方」が180度変わるのではないかとさえ思えてくる。

 吉井コーチはストレートが良いことがポイントだとこう話している。

「増井に関しては、その年は後ろで投げているときに変化球ばかり投げていて、調子を落としていたんですね。先発になるとそういうわけには行かないじゃないですか。ストレートを投げていかないといけない。その中で、ストレートが本来のものになってきた。高梨に関しては先発で育成してきたのが、たまたまチーム事情でリリーフが足りていなかったので、そこで投げてもらっていた。彼のキャリアのスタートとしては、短いイニングを少しずつ抑えて自信をつけていったんで、先発にいってもバタバタしなくできた。意図していたわけではないけど、うまくはまったケースでした」
 
 2人の他にも、昨季、巨人で最多勝と最高勝率、最多奪三振の3冠に輝いた山口俊もリリーバーからの成功者に挙げられるだろう。もちろん、全員が成功できるというわけではないが、起用する側にしっかりとビジョンがあっての起用なら、成功はそう難しくはないのではないか。

 松井の場合も、ポイントになるのはストレートだろう。最速は154km/hだが、2018年の先発時は149km/hだったと考えると、おおよそ、この近辺で推移するはずだ。球速というよりも真縦から振り下ろす角度が松井の持ち味だから、そのボールをいかに生かすことができるか。そうすることで、他のボールをも生きてくるはずだ。

 もともと、松井の課題としてあったのは、よく言われている「制球難」ではなく、彼の変化球が振らせるものが多かったことだった。高校時代に大記録を打ち立てたときもそうだが、ストレートにしても変化球にしても、どちらもボール球で勝負していくケースが多いのだ。

 これはプロ入りして先発したときに苦労した点でもあるが、長いイニングを投げていく過程では、相手打線が打者によって積極的に振ってくる打者と見てくる打者を変えてくる。また、それは打席によっても然り。そうした相手に対峙していくためにカウントを整えることができるかが重要になるのだ。

 松井は、昨季からスライダーがバージョンアップした。球速が上がり、カットボールに近い球種になり、ストレートとの判別が難しくなった。カウントを取ることもできるから、この球種は先発投手としての彼の大きなアドバンテージになるはずである。

 1番の試金石になるのは対西武だ。

 積極果敢に振ってくるイメージが強い西武打線だが、実は、2年連続して四球数がリーグ断トツトップだ。これは辻発彦監督もシーズン中に仕切りにほめている要素でもあるのだが、彼らはとにかく余計なボールを振らないのだ。つまり、西武打線を抑えるには、カウントが悪くなってから整えるという意味ではない球種・コースへの投げ分けが必要とされてくるというわけである。

 楽天は22日のオープン戦初戦で松井を先発させるという。
 クローザーでタイトルを取り、先発投手としても球界屈指の立ち位置へと君臨することができるかは非常に興味深い。

 松井ほどのポテンシャルなら、先発でも十分にやれるだろう。
 その期待感を持って、明日の登板からを楽しみにしたい

文● 氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

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【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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