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MLB

打球に答えを求めて……秋山翔吾が明かした苦戦の理由と復活への糸口

氏原英明

2020.03.05

手応えをつかんだ3打席目。安打製造機は復活に自信をのぞかせる。(C)Getty Images

手応えをつかんだ3打席目。安打製造機は復活に自信をのぞかせる。(C)Getty Images

 おそらく、秋山が手を出そうと思っても手を出せないのは、力んでしまって身体が止まり、自分の意図した通りに動いてくれくなっているのだろう。「本能的に」や「まだストレートをしっかり捉えた打球が一度もない」という彼の言葉にも、苦悩の様子が透けて見えてくる。

 ただ、3打席目は初球の外の真っ直ぐに手が出せていた。快心ではなかったものの、手が出たこと、そして、やや捉えた感覚を秋山自身が得たことは、前の2打席に比べれば改善点だったはずだ。アプローチを変えたようにも見えたが、実際はどうだったのか。

「ちょっとゆっくり振ろうと思いました。感覚としてはトスバッティングに近いくらい、ゆっくり振りました。

 身体に力を入れるのではなくて、ボールの軌道にバットを遠目から入れるように、合わせられる風にしていい打球が飛んだ。どれだけ強く振ることができても、僕にとって打球が答えなんですよね。納得はしてないですけど、1、2打席の反省はできたのかなと思います」
 
 この日対戦したはどちらも一線級の投手だ。タイラー・チャトウッドはメジャー通算49勝を挙げ、今季の先発ローテーション候補にいるし、通算346セーブのキンブレルはいうまでもない存在だ。結果的に秋山は“本物”のメジャーリーガーの力に後手を踏んでしまったわけだが、この経験は彼にとって、アジャストした3打席目を含めて一つの分岐点になるかもしれない。

 秋山は自身への期待を込めていう。

「自分がこうやって動かしたいというものが表現できた上で、対応していきたい。まだ自分のことを探っている感じはある。相手の投手のボールに集中できるくらい、結果も含めてスッキリする打球を出したいです。

 3打席目は、まだいい感じで打てたところもあるので、それを前向きに捉えながら、前の2打席を反省しながら、日々、前進していくしかないと思う」

 アジャストまでの時間が掛かってしまうことは悪くない。悩んだ分だけ、それを手にしたときは、彼にとってメジャーで生き抜く財産になるだろう。

 ひとまず、彼自身が納得できる一打をどう掴むことができるのか。そこから秋山の本領が発揮されるはずだ。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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