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MLB

【2010年代10大ニュース:1~4位】データ革命、カブス世界一、トラウトの台頭…ニュースで振り返る激動の10年

出野哲也

2020.04.04

〝負け犬

〝負け犬"カブスは16年、ついに108年ぶりの世界一を手にした。(C)Getty Images

2位:”負け犬”カブスが108年ぶりの王座に
 1907、08年に2年続けてワールドシリーズを制したカブスだったが、その後は1世紀以上にわたって王座から遠ざかり、いつしか古豪のイメージは消えて負け犬のイメージが定着。2003年にはリーグ優勝を目前にして観客席のファンがファウルフライの捕球を妨害、それがきっかけで逆転負けする悲劇も起きた。

 だが、11年10月、レッドソックスを04年に86年ぶりの世界一に導いたセオ・エプスティーンが編成トップに就任して改革に着手する。5年連続最下位の苦難の時期を経験しながら、徐々にチームを強化させると、15年にリーグ優勝決定シリーズまで進出、16年はシーズン中にヤンキースからアロルディス・チャップマンを加入させて71年ぶりのリーグ優勝を果たした。インディアンスとのワールドシリーズも1勝3敗の劣勢をひっくり返し、89年の映画『バック・トゥ・ザ・フューチャーⅡ』での〝予言〞から1年遅れで3万9466日ぶりの頂点に立った。

 2日後に行われた優勝パレードには、〝愛すべき負け犬〞がついに手にした栄冠を祝福するため約500万人ものファンが集結。スポーツ関係イベントでの史上最多動員数を記録した。
 
1位:データ革命が球界を席巻
『マネー・ボール』が刊行され、ベストセラーとなったのが2003年。同書で詳述されたセイバーメトリクス的なアプローチは、その後も球界のあらゆる点に浸透していった。
 
 本が出た当時は未整備だった守備面の評価も、その後、急速に進展。UZRやDRSなどの新型指標は、印象だけで語られがちだった守備の巧拙に数字的な根拠を与えた。フレーミングの開発で、捕手の評価にも新たな光が当てられた。そして、10年代に入って認知度が高まった総合指標WARは、今やMVP投票などで欠かせないツールになった。
 
 このように、セイバーメトリクスは野球に対する見方を変え、過去の常識を打ち破ったけれども、選手のプレー自体まで変えるものではなかった。だが、データが野球そのものを変える時代が到来した。端緒となったのは極端な守備シフトの導入であり、やがてそれに対抗する形でフライボール革命が発生した。トラックマンの導入によって長打が出やすい打球角度・速度が導き出され、打者たちはそれに合わせて打撃スタイルを最適化した。

 その結果、過去に類を見ないホームラン乱発時代に突入。投手たちも投球の回転数などのデータをもとに、より効果的なボールを投げるための練習に取り組んだ。当然ながら、こうした動きは20世紀までの野球界ではあり得なかった。

 さらにはドライブライン・ベースボールのような、最新データをトレーニングに取り入れた施設で個人的に鍛えて飛躍する選手が現れるに至り、コーチやマイナーリーグの存在意義も問われ始めた。現在、議論されているマイナー球団削減策もその延長線上にある。10年代の「データ革命」は、MLBの歴史において最もエポックメイキングな出来事の一つとして記憶されるだろう。

文●出野哲也

※『スラッガー』2020年3月号より転載

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