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プロ野球

“千賀フォーム”導入を経たからこそ今がある。先発転向を目指す若鯉・遠藤淳志の現在地

前原淳

2020.04.07

 知人を介して1月14日から3日間、千賀や菅野智之(巨人)、ソフトボール女子のエース上野由岐子らが師事する鴻江寿治トレーナーの下、福岡県八女市での合同自主トレに参加した。これまで知らなかった体の使い方を学び、その新鮮さが景色を変えた。トレーニング中だけでなく、プロ野球界の先輩たちと技術論を交わした食事の時間も貴重な時間だった。

 遠藤は、大胆にもそこでフォーム変更を決めた。信じ込むことができるのも若さゆえだろう。

 スポーツの世界で若さはひとつの武器となる。恐れを知らない勢いで好結果を手にすることもある。だが、ときにもろく、周りが見えなくなることもある。年齢や経験を重ねることで角が取れ、視野が広がり、より完成されたアスリートとなる。

 遠藤はまだ20歳。信じ込む選択肢しかなかない若手に、厳しいプロの世界が現実を突きつける。
 
 キャンプ初日からフォームはばらつき、球も走らない。首脳陣は首をひねり、指導も受けた。それでも周囲が「千賀フォーム」と注目することに、佐々岡真司監督は「千賀くんに失礼」と日本を代表する右腕に詫びるほどだった。

 遠藤自身も投球に手応えはなかったものの、取り組んだばかりの新フォームをすぐに諦めることもできなかった。「まだ始めたばかりだから。そんなすぐにうまくいくものでもない」。キャンプ序盤は自分に言い聞かせるように、そう口にしていた。だが、心の中は違った。「反面、焦りもありました。力が出ていなかったですから」。焦りが悪循環を生み、小細工しようとすることでより体の力を使い切れないフォームになっていた。

 キャンプ中盤の紅白戦で2回4安打4失点という結果を受け、フォーム変更を決断した。自分の決断に固執するのではなく、目標に掲げた「先発ローテ入り」を果たすための決断。「佐々岡さんからも言われましたが、正直力を出せていなかった。(松田元)オーナーからも『昨年良かったし、そこまで考える必要はないんじゃないか』と言われて納得した」。もしかしたら継続するよりも、断念する決断の方が難しかったかもしれない。
 

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