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プロ野球

「今やれることをやるだけ」。難局を乗り越えた先に待つ開幕へ向け準備を重ねるカープの選手たち

前原淳

2020.05.02

 以上のように、選手だけでなく首脳陣や打撃投手、ブルペン捕手、トレーナー、マネジャー、広報など、現場で動くスタッフもみな完全に4班に分かれている。午前と午後の各グループが接触しないよう球場滞在時間を設け、入れ替わる時間を最低30分確保。ロッカーの換気が行われている。球場内の選手食堂も選手が向き合う円卓から横並びになるように長テーブルに変わった。

「調整」ではあるものの、時間も強度も限られる。2日に1度の1勤1休の練習は3時間もない。野手は内外野3カ所でのノックをローテーションで回り、フリー打撃。投手は1日3、4人しかブルペン投球ができないため、遠投や内野ノックから強い送球を送るなど工夫しながら調整している。選手たちも「オフシーズンでも、ここまで休むことない」という。

 3月中旬から調整試合も無観客となり、ファンの前でプレーする機会はなくなった。開幕できても、無観客となる可能性も高い。練習風景を動画で撮影したり、拡大防止啓発の動画を配信したりとファンに向けた新たな取り組みも行っている。
 
 4月28日には、佐々岡監督や大瀬良大地らが広島市内の感染症指定医療機関を訪問し、駐車場から病棟の医療従事者や患者に向かって約10分間、手を振ってエールを送った。ファンだけでなく、広島県民にとって、カープ選手は特別な存在。苦しい状況下でも、プロ野球選手にできることはある。

 何よりも、プロ野球選手としてやるべきことはプレーでファンに魅せること。ならば、今は与えられた条件の中で、最善の準備をするしかない。

 1勤1休の調整でも、フリー打撃では目的意識を持って取り組み、限られた中でも個人練習を入れる。中には休養日でも部屋でバットを振ったり、人気の少ない公園で走ったりと運動量を落とさないよう工夫する。「今やれることをやるだけ」と口をそろえる選手たちが見据えるのは、難局を乗り越えた先に待つ開幕だけだ。

文●前原淳

【著者プロフィール】
1980年7月20日・福岡県生まれ。現在は外部ライターとして日刊スポーツ・広島担当。0大学卒業後、編集プロダクションで4年間の下積みを経て、2007年に広島の出版社に入社。14年12月にフリー転身。華やかなプロ野球界の中にある、ひとりの人間としての心の動きを捉えるために日々奮闘中。取材すればするほど、深みを感じるアスリートの心技体――。その先にある答えを追い続ける。『Number』などにも寄稿。

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