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プロ野球

「球界で一番過小評価されてる」斉藤和巳だから“伝えたい”、40歳開幕投手・石川雅規の偉大さ

新井裕貴(SLUGGER編集部)

2020.06.15

 ご存知の通り、斉藤は2000年代前半のホークスを、いや球界を代表する本格派ピッチャーだった。190cmを超える長身から快速球とスライダー、フォークで打者を蹂躙。03年には20勝、06年には勝利・防御率・奪三振・勝率・完封の投手五冠を達成してパ・リーグ初となる2度目の沢村賞を手にした。ずば抜けた成績だけでなく、その立ち姿や、雄叫びを上げる様はとにかく絵になり、ダルビッシュ有(現シカゴ・カブス)をはじめ多くのプロ野球選手の憧れになったほどである。

 しかし、全盛期は短かった。相次ぐ故障に悩まされ、07年を最後に一軍登板はなく、13年限りで引退。プロ通算11年で79勝、規定投球回到達は3回。しかし、03~06年に手にしたタイトルは計8個を数えるなど、その4年間の「瞬間最大風速」はあまりに凄まじかった。

 斉藤は言う。「1年、2年パッパッと結果を残すことは、まぁ本人の力も多少は必要ですが、タイミングや運があれば誰にでも可能性はあります。ですが、『長くやる』、『結果を残し続ける』ことは本当に難しい。僕は両方できなかった。現役を辞めた後に、そういう気持ちが一層、強くなりました」

 もちろん、多少の謙遜もあるだろう。斉藤のような成績を残せる選手など、本当にごくごくわずかである。しかしこの言葉には、「Professional Baseball Player」にとって大事なことが込められているように思う。
 
 プロ野球はシーズンが始まれば、毎日のように試合が行われる。過酷なプレッシャーとの戦いはもちろんのこと、日々の環境、何より1分1秒ごとに変化する自身の身体と気持ちに向き合い続けなければならない。そうした中でしっかり結果を残し、それを何年も継続できる者が「職業:プロ野球選手」として生き残り、真の一流選手として称賛される存在となるのだ。

「端から見ると、試合に出ることは普通に見えますよね? でも、それが一番、難しいことですからね」

 故障を繰り返してマウンドに上がることができなかった斉藤だからこそ、“普通”のことを、自らの“職”を全うすることがどれだけ大変なのかを、痛いほど知っている。実は、石川とはあまり面識はないという。しかしそれでも、これだけ熱い言葉を並べた理由に、もはや説明はいるまい。

 ヤクルトの高津臣吾監督は、開幕投手に石川を抜擢した理由についてこう語っていた。「彼の投げている姿で刺激を受ける人がたくさんいると思うし、ベテランになっても、チームのトップであり続ける姿には、いろいろな意味がこもっている」。

 超異例となった今年のプロ野球だからこそ、斉藤が「本当のプロフェッショナル」と称賛する不惑の左腕・石川の生き様は、多くの人に勇気を、そしてプロ野球選手が何たるかを証明してくれるに違いない。

取材・文●新井裕貴(SLUGGER編集部)
 
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