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プロ野球

【2010年代通信簿:ソフトバンク】補強と育成の両面で投資を惜しまない姿勢が日本一6回の強さの源泉

出野哲也

2020.06.02

 こうした育成力の見本と言えるのが、今や侍ジャパンにも選出されるまでに成長した2人の育成枠出身選手だ。18年の日本シリーズで盗塁を刺しまくり、MVPに選ばれた甲斐拓也。そして19年に最多奪三振、チーム76年ぶりのノーヒット・ノーランを達成した千賀滉大である。彼ら以外にも石川柊太、大竹耕太郎、牧原大成、周東佑京ら、育成上がりで貴重な戦力になっている選手が何人もいる。

 10年代後半のホークスを牽引した柳田悠岐も、10年のドラフト2位で入団した当時はそこまで評価の高い選手ではなかった。だが14年からレギュラーに完全に定着すると、15年は打率.363、出塁率.469、長打率.631の3部門を制してMVPを受賞。以後18年まで4年続けて出塁率と長打率は1位で、球界最高の選手の一人と見なされるまで成長を遂げた。資金力と育成力、将来を見通す確かなビジョンが合わさって黄金時代が形成されたのだ。
 
 18・19年はサファテや中村晃、柳田らが故障に倒れたこともあり、レギュラーシーズンでは西武の後塵を拝した。それでもクライマックスシリーズでひっくり返すと、日本シリーズでも18年は広島、19年は巨人を撃破。これで11年の中日に始まり、14年阪神、15年ヤクルト、17年DeNAと合わせ、10年代だけでセ・リーグ6球団すべてを倒したことになった。

 孫正義オーナーは常々「巨人のV9を超えるV10」を目標に掲げている。現実的には難しいかもしれないが、そのくらい壮大な目標を叶えるための努力は怠っていない。勝利のための投資は惜しまないその姿勢は、プロ野球チームの本来あるべき姿を体現していると言ってもいいだろう。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。

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