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プロ野球

【プロ野球選手の社会貢献活動:第2回】「何か役に立ちたい」――菅野の思いから始まった東京都医療支援の裏側

節丸裕一

2020.06.07

「でも、基金の準備には一番時間がかかりました。東京都の医療支援のために、誰がいくら寄付するかは決まった。でも、寄付する先、基金の受け皿をどうするのか。東京都と話しながら、一番良い方法を探しました」

 とはいえ、医療現場の状況を考えれば、寄付は少しでも早い方がいい。「目安として、4月24日の小池都知事の(毎週金曜日の)定例会見に間に合わせたいという思いで検討しました。結局、読売新聞社と社会福祉法人『読売光と愛の事業団』が設立した『東京コロナ医療支援基金』を通じての寄付になりました」

 24日の定例会見では5人のメッセージ動画が流された。その中で菅野は「みなさんも是非支援の輪に加わってください」と訴えた。同じ巨人の岩隈久志、さらには野球好きで知られるタレントの中居正広さんがこの活動に賛同し、一般からの寄付も4月末までに3000万円を超えた。結果的にこれは、吉野さんが考えていた「球団と選手の知名度、影響力を活かした啓蒙活動」のひとつの形になった。
 
「選手の活動を発表すると大きく扱われやすい分、鼻につくのか、売名行為といった批判もされやすい。本人はすごくショックを受けます。発表しなければ批判されないが、影響力も行使できない。そのバランスですよね。こういう活動が広がるためにも、選手が傷ついたり後悔したりしないように、これならカッコイイ、俺も同じことやろう、と思ってくれる最大限を求めていきたい」

 そして、「同じ思いを持った人たちの道標になりたい」と吉野さんは語ってくれた。

「そういう意味で、巨人が球団として批判の対象になることも覚悟しながら、球界の先頭で頑張っていきたい。社会全体のSOSに届くように、球団ごと、選手ごとにやっていくことも価値があるし、よりスピーディーに12球団で手を取り合っていくメリットもある。今後は12球団での連携も強めていきたいですね」

 昔から“球界の盟主”と言われた巨人。吉野さんの言葉からは、人気だけではなく、社会的な役割を果たしたいという思いがにじんで見えた。

文●節丸裕一

【著者プロフィール】
せつまるゆういち。フリーアナウンサー。早稲田大学を卒業後、サラリーマンを経てアナウンサーに転身。現在はJ SPORTSなどでプロ野球やMLB中継を担当。フジテレビONE『プロ野球ニュース』にも出演。

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