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MLB

家族の健康と責任感のはざまで――コロナ渦中のシーズンに臨むトラウトの思い

斎藤庸裕

2020.08.08

 メディアの取材も厳しく規制されている。各球場で取材できる記者やカメラマン、テレビクルーは35人のみ。グラウンドへのアクセスは禁止され、練習を見るのも記者席からに限定された。球場入り前には、コロナの症状があるかどうか、州外への渡航歴、感染者との接触の有無などの質問を受け、文書にサインを求められる。その後、2度の検温を経て、球場入りが許可となる。選手との接触はもちろん禁止で、取材はすべて『Zoom』などでのオンライン上で行われた。

 キャンプ中、検査結果が遅れるなどのハプニングはあったが、各チームの調整は概ね順調に進んだ。開幕2日前、トラウトはプレー続行を表明。「僕はプレーする。今のところは非常にいい感じ。皆が責任を持って、互いを尊重していると思う。マスクをして、社会的距離を保って、安全にする。その結果が出ている。遠征で違う都市にいくのはタフなことだけど、今のところはすごくにいい感じ」。覚悟を決め、開幕を迎えた。
 
 いざシーズンが始まると、違和感のある光景が多く見られた。打席や守備中でも、フェイスマスクを着用する選手がいる。ある選手が本塁打を放てば、エアハイタッチやヒジとヒジを合わせるエルボータッチで祝福する。社会的距離を確保するため、ベンチではなく横の客席に座って戦況を見つめる控え選手もいる。一部の選手が遠征中に外出して感染したとの報道もあったが、予防の徹底がコロナ禍の強行開催を可能にしている。

 5球団が本拠地を置くカリフォルニア州では一時期、1日の新規感染者が1万人を超える時期が続いたが、8月に入って減少傾向。トラウトも無事、7月30日に夫人の出産に立ち会うことができた。それでも、今後も敵地への遠征などで感染リスクが常に伴う。「僕は安全だと感じているし、みんなが責任を持って、ホテルにとどまって、正しいことをする。これまではいい感じだけど、やっぱり脅威ではある」。

 不安は拭えない。それでもプレーする。トラウトは開幕前、選手の思いを代弁するように言った。

「野球がしたい。本当に困難な状況で、次の日に何が起こるかなんて誰も分からない。だけど、スポーツを愛するファンがいる。僕らはすべてのファンのためにプレーするんだ」

文●斎藤庸裕

【著者プロフィール】
さいとう・のぶひろ。1983年、埼玉県生まれ。日刊スポーツ新聞社でプロ野球担当記者を務めた後サンディエゴ州立大学でスポーツビジネスを学ぶ。2018年から大谷翔平の担当記者を務める。日刊スポーツでコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」を配信中。

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