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高校野球

新たな投球スタイルで好投した明石商・中森に見る今大会ならではの「意義」

氏原英明

2020.08.16

 中森は球種を多く操るタイプの投手だ。どの球種でもカウントを稼ぐことができ、空振りも取れる。クローズアップされるのは150キロのストレートだが、総合的な能力こそが彼の持ち味である。

 しかし、際どいコースに決めることばかりを意識すると球数は増える。カウントを悪くして腕が振り切れないストライク勝負で打ち込まれる。それが昨年までの中森の課題だった

 中森と好対照なのが、3日目の智弁学園戦で最速153キロを計測した中京大中京の高橋宏斗だ。高橋は中森ほどの変化球のキレを持っているわけではない。しかし、その分、直球勝負を挑むことが多く、それがストレートそのものの質の向上につながっていた。これに対して中森は、多彩な球種をストライクゾーンに集める、いわば総合力で勝負するスタイルを身につけたのだ。
 
 健大高崎の青柳監督は試合後、何度もこの夏のマネジメントの失敗を嘆いていた。こちらがその変化で得た収穫もあるのではと問うても、首を縦に振ることはなかった。

「まとまっているようで、チームはまとまっていなかった」

 青柳監督はそう語った。

 だが、大事なことは勝ち負けではない。

 いつもと違う大会形式の中で、指導者、選手、そして高校野球野球界が何を得るのか。その意識を持つことが、この大会の意義なのではないかと思う。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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